・・・佐田は神経的に正義派的に、彼の認識の中で一般化されている児童の「意欲をもたぬ幼年期の純真さ、無邪気さ」、創意性などを計量し、「労作にむすびついた教育、具体的実践に結合した」教育こそ小学教育の基礎であると感じる。 たとえば「窓ふき」という・・・ 宮本百合子 「一連の非プロレタリア的作品」
・・・丁度、女学校の二三年頃、理由もなく幼年時代をいつくしむような感傷は、もう私からは離れた。それかといって、多くの女性が、自分の娘の幼い通学姿を眺めて、我知らず追懐に胸をそそられるだろうような場合は、未だ自分にとっては未知の世界に属する。若しか・・・ 宮本百合子 「思い出すかずかず」
・・・従って小さい息子や娘ケーテの心の成長は、幼年時代から額に汗して勤労する人々とともに過ごされたことを示している。後年ケーテが正直な働く人々の生活の最も忠実な描き手となったことは、偶然ではなかったのである。 その職人が、引つづいてケーテに銅・・・ 宮本百合子 「ケーテ・コルヴィッツの画業」
・・・それであらゆる面で大人になることを欲してこそ、自然である。幼年と成年、老年と自身との間に、鋭い歴史的自覚の線を感じ、それをおしすすめ、新民主主義という自身の興味つきない課題を完遂して、世界の中に一人前になろうと欲してこそ、自然なのである。・・・ 宮本百合子 「現代の主題」
・・・そして、書きはじめて見ると、箇々別々に書いた感想はそのまま役に立たぬことが分り、七月下旬から八月一杯、私はすべて、ほかの仕事をことわって幼年時代から全く新しく書きはじめたのであったが、まだ健康がすっかり恢復していなかったため、過労になって、・・・ 宮本百合子 「「ゴーリキイ伝」の遅延について」
・・・この稚い働きての中で十一歳までのものでは、女の児が男児の倍の数を占め、十三歳までのものの中には女の子の方が十万人も多い割合であることも、私たちに沁々と現代の苦難少くない幼年時代を思いやらせずにいない。 六年制であってさえ、この実情であっ・・・ 宮本百合子 「国民学校への過程」
・・・この船出は、地理上の旅行であるばかりでなく、フランス中産階級の生活の中でも特別な生い立ちをもったジイドにとっては全く幼年時代からの訣別であった。アフリカという未知の地方への出発は、ジイドにとってはとりも直さず未知な生活、未知な自己の個性、未・・・ 宮本百合子 「ジイドとそのソヴェト旅行記」
・・・ 三十四歳になったとき、既に「幼年時代」「地主の朝」「コサック」「少年時代」「セバストーポリ」「三つの死」「結婚の幸福」の作者であったトルストイは、三年の間心に思いつづけて求婚する決心のつかなかったソフィヤと遂に結婚した。ソフィヤはその・・・ 宮本百合子 「ジャンの物語」
・・・また、幼年時代から学校で、職場で共に働いている今のソヴェト同盟の若い連中は、男女の評価の標準をどこにおくかということを真実にハッキリ自得しはじめている。 レーニンは、性関係の一時混乱した一九一八年時代に、正しい批判と予言とをそのことにつ・・・ 宮本百合子 「砂遊場からの同志」
・・・ 資本主義生産は十三歳の幼年工を何時間働かしています? 若すぎるといって夜業をさせないでしょうか? プロレタリアートは永い経験によって、プロレタリアートの十八歳の女は、職場で立派に一人前の生産単位であることを知っています。十八歳の娘が・・・ 宮本百合子 「スモーリヌイに翻る赤旗」
出典:青空文庫