・・・ でも、どうしていつも女性の側が、ほとんどその年齢にかかわらず異性との間により広闊な友情を求める心理に在るのだろうか。男の雑誌に、異性との友情について書かれる記事は稀なのに、どうして女性のための雑誌は、時を置いてはこのテーマをくりかえす・・・ 宮本百合子 「異性の友情」
・・・その文芸批評を読むと、もうそれだけで何か活々した熱と力と、広闊な新社会文化への輝きと期待とを感じるようなものがいるのである。 プロレタリアの陣営からの批評は、階級的陣営が違うと、もういうことはきまっていると思わせる狭いところがあった・・・ 宮本百合子 「こういう月評が欲しい」
・・・ 此の生きたい形式で生きると云う事は、どの位人間の魂を広闊にするものでございましょう。 若し彼女が自身の力さえあれば、どんな大きな邸宅に百人の従僕を使って暮す事が出来ると倶に、どこかアパートメント只一つの部屋をかりて、男のような服装・・・ 宮本百合子 「C先生への手紙」
・・・ それは、青葉の美しくなりはじめた季節で、病室からの広闊な谷間の眺めは極めて印象的であった。孝子夫人はそのとき、布団の上に坐って、燦とした緑色の外景に目をやりながら、もう数年の間病床についている妻として、御良人の生活に対する微妙な思いや・・・ 宮本百合子 「白藤」
・・・ もし新しき文学が、コンミニズム文学と新感覚派文学の二つであるとするならば、そのいずれが、果して文学の圏内に於て、より新しくして広闊なる文学となるべきであろうか。 われわれは考えねばならぬ。もしもコンミニズム文学が、曾て用い・・・ 横光利一 「新感覚派とコンミニズム文学」
出典:青空文庫