・・・れども、君たちは、ああ、太宰さんですか、お逢いしたいと思っていました、あなたの、××という作品にはまいりました、握手しましょう、などと言い、こっちはそうかと思っていると、その後、新聞の時評やら、または座談会などで、その同一人が、へえ? と思・・・ 太宰治 「如是我聞」
・・・以下はその座談筆記の全文であって、ところどころの括弧の中の文章は、私の蛇足にも似た説明である事は前回のとおりだ。 なに、むずかしい事はありません。つまらぬ知識に迷わされるからいけない。女は、うぶ。この他には何も要らない。田舎でよく見・・・ 太宰治 「花吹雪」
・・・「それを餌に、座談会じゃないのか?」 私は、所謂文化講演会だの、座談会だのに出て、人々に民主主義の意義などを説き聞かせるのは、にがてなのである。いかにも自分がにせもので、狸のお化けのような気がして来て、たまらないのである。「まさ・・・ 太宰治 「母」
・・・つづいて座談会の筈でありましたが、委員は、お疲れのようですから、少し休憩なさい、と私にすすめてくれましたが、私は、「いいえ、私のほうは大丈夫です。あなた達のほうがお疲れだったでしょう。」と言いましたら、場内に笑声が湧きました。くたくたに・・・ 太宰治 「みみずく通信」
・・・それで、負惜しみのようではあるが、物理学を専攻する人間でも、座談や随筆の中ではいくらか自由な用語の選択を寛容してもらいたいと思うのである。 この抗議のはがきの差出人は某病院外科医員花輪盛としてあった。この姓名は臨時にこしらえたものらしい・・・ 寺田寅彦 「随筆難」
・・・社から高島貞喜がくるという通知を受けとったこと、その演説会と座談会をやるため、印刷工組合と友愛会支部とで出来ている熊本労働組合連合会の役員たちが宣伝をうけもつこと、高島の接待は第五高等学校の連中がやること等であった。しかし同じ新人会熊本支部・・・ 徳永直 「白い道」
・・・一昨年でしたかやっぱり『学生評論』で各学校からの男女学生が集って座談会をしたことがありました。丁度学生祭のあとで、話題は豊富でしたが、女子学生の問題の中には家庭と職業との矛盾をどうするかという問題があり、したがってそれが恋愛や結婚の問題にも・・・ 宮本百合子 「新しい抵抗について」
・・・ 本当の知的生活が多くのアメリカ人の日常生活から失われているということについては展望十一月号座談会の「アメリカ文化と日本」の中で、都留重人氏がこまかく具体的に語っておられます。都留氏の話は非常に参考になる。キャナライゼーションということ・・・ 宮本百合子 「アメリカ文化の問題」
・・・ある婦人雑誌では某作家が横浜の特殊な病院へ入院中の夜の娘たちを訪問して座談会をしている。よこずわりの娘たちは某作家から、あなたがたは第一線の花形です、とたたえられている。せめて毒のない花になってほしい、とはげまされている。それに答える娘たち・・・ 宮本百合子 「偽りのない文化を」
・・・丹羽文雄氏が、放蕩はしてもよそへ子供は拵えない、何しろ子供にはかなわないからね、というようなことを、その常套性と旧い態度とに対して揶揄的高笑いをうける気づかいなしに、二十歳前後の若い女の座談会で云っていられる状態なのである。『文芸』十月・・・ 宮本百合子 「鴎外・漱石・藤村など」
出典:青空文庫