・・・木田が学校で、「勇ちゃん、僕のうち急に引っ越すので転校しなければならんのだよ。だから、きょう遊びにおいでよ。」といいました。「どこへ引っ越しするの?」「遠い、浅草の方なんだ。」 その日、勇ちゃんは、学校から帰ると遊びにいきま・・・ 小川未明 「すいれんは咲いたが」
・・・自分が父の没後郷里の家をたたんでこの地へ引っ越す際に彼女はその郷里の海浜の村へ帰って行った。彼女の家を立てるべき弟は日露戦争で戦死したために彼女はほんとうの一人ぽっちであったので、他家に嫁した姉の女の子を養女にしてその世話をしているという事・・・ 寺田寅彦 「備忘録」
・・・と痛感する佐々木をこめて一群の日本人が集まって個人的な問題を中心として議論したり、居住の地域を問題にしたり、宿主とケンカしたり、引っ越したり、一人の仲間が引っ越すとその仲間が遠い郊外の引越先まで行って見て、古い党員の下宿主からリンゴを貰って・・・ 宮本百合子 「プロレタリア文学における国際的主題について」
出典:青空文庫