・・・つまり現代の建設期のソヴェト青年男女が持っている階級的な強みが彼等の中にはっきり生きている訳だ。何と云っても今ソヴェト同盟で一番活溌に文化活動をやっているのは勤労大衆の中の若い人々、コムソモールを中心としている。誰でも知っているようにソヴェ・・・ 宮本百合子 「ソヴェト「劇場労働青年」」
・・・ 訴え、恐ろしい訴え――それも自分の方には何の強みもなさそうに思われた訴え――が、すぐ目前に迫っていることを思った禰宜様宮田は、もう何をどう考えることも出来ないほどの混乱を感じた。 体中で震えながら、冷汗を掻いている彼を見ながら、番・・・ 宮本百合子 「禰宜様宮田」
・・・グングンとさし込んで来る力をジイッと保って居る強み。そう云うものが、女には何だかうすいように思われる。今、私はかなり力のこみあげを自覚して居る。何かになろうとする力が、次第次第に膨らんで来るときの苦しさを、自分は涙と光栄とをもって、堪える。・・・ 宮本百合子 「「禰宜様宮田」創作メモ」
・・・文化の問題から、バックの身内にあるヨーロッパ人の強みをとりあげるとしても、それはバックにとって優越感として自覚されたりしているとは思えない。もしかしたら、彼女は、自分を書かしめている力が、まだ中国の一般の女には与えられていない文化の歴史的、・・・ 宮本百合子 「パァル・バックの作風その他」
・・・文学の仕事が現実の過程では作家一人によってされるということから来る個人的傾向のマイナスな点が一つの困難であり、演劇ではそれが常に集団的であり、しかもその集団を動かす人が必要であるということから、独特な強みと制約が生じています。集団の気分的な・・・ 宮本百合子 「一つの感想」
・・・ 今日、私自身が自らの裡に自覚する強みも、弱みも、何処か遠い、見えない彼方に下された胚種の、一つの発芽であると、何うして云えないだろう。 此の一家族を貫く何等かの遺伝の上に、私は此も亦必然的な「日本」と云う祖国の気分を負って居る。・・・ 宮本百合子 「無題」
・・・Casus として取り扱って、感動せずに、冷眼に視ている処に医者の強みがある。しかし花房はそういう境界には到らずにしまった。花房はまだ病人が人間に見えているうちに、病人を扱わないようになってしまった。そしてその記憶には唯 Curiosa が・・・ 森鴎外 「カズイスチカ」
・・・そこにドイツの強みがある。それでドイツは世界に羽をのして、息張っていることが出来る。それで今のような、社会民政党の跋扈している時代になっても、ウィルヘルム第二世は護衛兵も連れずに、侍従武官と自動車に相乗をして、ぷっぷと喇叭を吹かせてベルリン・・・ 森鴎外 「かのように」
・・・こういう勢いになったのは、大夫の詞に人を押しつける強みがあって、母親はそれに抗うことが出来ぬからである。その抗うことの出来ぬのは、どこか恐ろしいところがあるからである。しかし母親は自分が大夫を恐れているとは思っていない。自分の心がはっきりわ・・・ 森鴎外 「山椒大夫」
・・・ で、彼らの強みは、一般の常識が認容するところをふりかざすにある。たとえば「こういう人が実際あるのだ、」「こういう事を現に自分も感じている、多くの人も感じている、」「それがある理想から見て好ましくないことであろうとも、とにかく人間の自然・・・ 和辻哲郎 「「自然」を深めよ」
出典:青空文庫