・・・しかしローレンスは、人間としての女性をはずかしめる者としてではなく、枯涸と酔生夢死から人間の女として覚醒させる者として、より強壮で、率直な男の性を提出している。 D・H・ローレンスは、一生、自分自身がおちこんでいるいくつかの矛盾からぬけ・・・ 宮本百合子 「傷だらけの足」
・・・より強壮な肉体の配偶を互に選び合えということに重点をおいて語られている。 これらのことは、結婚の現実に幸福をましてゆく一つの大切な条件であるし、日本の女性たちはこれまであまりその方面の知識や関心が無さすぎた。そのために永い歴史の間で女性・・・ 宮本百合子 「結婚論の性格」
・・・それのみか、一年の時を経た昨今、彼らは呆然自失から立ちなおり、きわめて速力を出して、この佝僂病が人間性の上にのこされているうちに、まだわたしたちの精神が十分強壮、暢達なものと恢復しきらないうちに、その歪みを正常化するような社会事情を準備し、・・・ 宮本百合子 「現代の主題」
・・・ジャーナリズムの上に一年間も八方に向って文学的へどをはきつづけることのできた強壮な三好十郎が、どうして「小豚派作家論」の終りは、そのように我からしんみりとなって、とどのつまりは尾崎一雄におもてを向け、結局君なんかがもうすこし、しっかりしない・・・ 宮本百合子 「現代文学の広場」
・・・ 五年来、現代文学は、社会性の拡大、リアリティーのより強壮で立体的な把握と再現とを可能にする方法の発見を課題として来た。そのための試みという名目のもとには、少からぬ寛容が示されて来た。しかし文学現象は、その寛容の谷間を、戦後経済の濁流と・・・ 宮本百合子 「心に疼く欲求がある」
・・・ヒューマニズムは我の社会的拡大を眼目としているのであるが、今日の現実は、我の強壮な拡大の代りに没我を便宜とする事情でさえある。日本文学の歴史は、社会全史の一部として新たな一時期に当面しているのである。 明日の日本文学は、果してどこか・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・そして、彼女等の体躯が強壮であると云う事は、其裡に単に運動を重んじるとか、衣服が活動に便利であるとか申すより以上に深い根原を持つ事を知らなければならないと存じます。 或一民族の健康状態が、その民族の国家的境遇並に文明の程度と重大な相対的・・・ 宮本百合子 「C先生への手紙」
・・・極端な対比というかもしれないが、昔の奴隷市でも女奴隷は美しい上に必ず強壮でなければならなかったにちがいない。病気という不幸が少くとも人間共通の不幸として、そこへ特別女であるために生じる一層の不幸というものが加わって来ないような生活をつくり出・・・ 宮本百合子 「『静かなる愛』と『諸国の天女』」
・・・日本の現代文学の苦痛は、こんなに急なテムポで世界の歴史は前進しているのに、戦争中萎縮させられた人間性とその創造力がそれにふさわしい強壮な恢復をおくらしていることであると思う。「歌声よ、おこれ」以下、この本の前半にあつめられた評論は、それ・・・ 宮本百合子 「序(『歌声よ、おこれ』)」
・・・は、今日にあっても私たちを爽快にさせる明治の強壮な常識に貫かれている。 若い女性たちが数百の小説本はよみながら、一冊の生理書を読んだこともないひとの多いことをなげき「学問の教育に至りては女子も男子と相異あることなし」ということを原則とし・・・ 宮本百合子 「女性の歴史の七十四年」
出典:青空文庫