・・・当然のことにして、又その家の貧富貴賤、その人の才不才徳不徳、その身の強弱、その容貌の醜美に至るまで、篤と吟味するは都て結婚の約束前に在り。裏に表に手を尽して吟味に吟味を重ね、双方共に是れならばと決断していよ/\結婚したる上は、家の貧乏などを・・・ 福沢諭吉 「女大学評論」
・・・徹頭徹尾、今の婦人と今の男子とを相対照して今の関係にあらしむるは、我輩のあくまでも悦ばざる所なれども、眼を転じて一方より考うれば、本来物の高低・強弱・大小等は相対の関係にして絶対の義にあらず。高きものあればこそ低きものもあり、強大あればこそ・・・ 福沢諭吉 「日本男子論」
・・・すなわち俗にいう瘠我慢なれども、強弱相対していやしくも弱者の地位を保つものは、単にこの瘠我慢に依らざるはなし。啻に戦争の勝敗のみに限らず、平生の国交際においても瘠我慢の一義は決してこれを忘るべからず。欧州にて和蘭、白耳義のごとき小国が、仏独・・・ 福沢諭吉 「瘠我慢の説」
・・・一本の樹木も成長してゆく過程には、越した冬の寒さや雪の重さによって、夏の嵐の強弱によって年輪をさまざまに描き出して行くそうだ。私のこの一つの年輪は、閲された生活のどんな季節をつたえていることだろう。夫々の読者が夫々に生きて来た人生の季節の、・・・ 宮本百合子 「あとがき(『朝の風』)」
・・・作品の与える感動の質や強弱や方向や深浅や大小を、具体的に規定している、作品のその関心や理解こそ思想であろう。感動の性質をよそにして作品から思想を抽出し、評価することは出来ない。このように考えられた作品の思想は、作品の骨組みである構成において・・・ 宮本百合子 「作家に語りかける言葉」
・・・その力をはたらかせる力の強弱によって自分は生きも死にもする。そして、死と云うものも、あるときは、あまりに強く自分を誘う。 ○何時も旅行にさえ出ると、きっと自分を苦しめる陰鬱さ。 今日も私は苦しい悲しい心持がして居る。すっかり自分・・・ 宮本百合子 「「禰宜様宮田」創作メモ」
出典:青空文庫