・・・代々政治になれている特権者たちは、おだやかさを求めている人々の心を捕えて、自身の強権的な立場へ有利に利用するために、共産主義までをファシズムと同様に「全体主義」という新しい言葉でいいくるめています。 小泉信三氏の『共産主義批判の常識』の・・・ 宮本百合子 「新しい抵抗について」
・・・愛する日本が、また再び作家にかたことを云わせるような非条理な強権に決して屈することのないように。言論の自由ということは、どんなに人間の社会生活にとって基本的に主張されなければならない重大な権利であるかということについて忘れないために。 ・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第五巻)」
・・・ ところが十四年前日本の軍力が東洋において第二次世界大戦という世界史的惨禍の発端を開くと同時に、反動の強権は日本における最も高い民主的文学の成果であるプロレタリア文学運動をすっかり窒息させた。そして、日本の旧い文学は、これまで自身の柱と・・・ 宮本百合子 「歌声よ、おこれ」
・・・やっと生きて帰って来た世間が冷たいのも、もとはといえば、不幸な人々を引っぱり出した同じその強権によって、愚弄されて来たことを今日の憤りとしている世間の感情があるからである。 人民同士が互に不幸への憤りを見当違いにぶっつけ合って苦んでいる・・・ 宮本百合子 「女の手帖」
・・・ヒューマニズムは、あらゆる人間的なるものを抑圧する強権に抗することを、そして人間性の新たなる主張を支持し、ファシズムに賛成しないものであるが、従来理解されていた意味でのマルクス主義の傾向とは異ったものである。プロレタリア文学ではない、もっと・・・ 宮本百合子 「今日の文学の鳥瞰図」
・・・当時、既に正宗白鳥氏その他が現在保護と監視は同義語であるとして、「文学者がさもしい根性を出して俗界の強権者の保護を求めたりするのは藪蛇の結果になりそうに私には想像される」と云った。 文芸院はその後形を変えて「文芸懇話会」となり、文芸院が・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・薄弱な客観的判断力を、津浪のような軍事的強権で押し流して、その人々の考える「公的」なものの中へ、人民生活の全面を集注させたのであった。 世界連帯のひろやかな展望から見て、旧い領土問題から出発した「日本のため」という観念が、どんなに狭い限・・・ 宮本百合子 「逆立ちの公・私」
・・・理想とする完全な個人主義の花盛りにまでは、人類として、歴史的にまだ多くの忍耐と時間とを要するとしても、既にその可能は見とおされている新社会の民衆の個性の発展の本質的意味を、明瞭に描き出し、横行している強権に対立するものとして示すことが出来な・・・ 宮本百合子 「ジイドとそのソヴェト旅行記」
・・・月号の部分では最も明瞭に且つ重点をそこにおいて企業内の反動政策との闘争について書いているのに肝心のそのところはちっとも理解せず、同志伊藤や笠原という婦人を書いたとこだけをとりあげ、同志小林が女に対して強権的ではなかったかなどと結果においてデ・・・ 宮本百合子 「小説の読みどころ」
・・・、当時の日本の権力が戦争推進のためどんなに現実を歪めた観念を社会のあらゆる面に流布しはじめたかということと、近代市民社会の生活史をもたない日本の文化人が自身の内なる封建性と非社会性によってどんなにその強権に屈伏したか、それらとのたたかいは、・・・ 宮本百合子 「序(『歌声よ、おこれ』)」
出典:青空文庫