・・・とただし書を添えながら、元来友情は、お互が対等であって互に尊敬し合うことのできる矜持ということが重要な契機であるから、奴隷や暴君が真の友情をもち得ないということの強調としていられるのであった。 今の時代の生活の感情のなかに受けとって味わ・・・ 宮本百合子 「異性の間の友情」
・・・の検討において特に作家とオルグ的活動についての分裂的認識の点を強調したのは、今日われわれプロレタリア作家に課せられている階級的課題の実践的理解と連関をもっているからである。今日プロレタリア作家に課せられている任務は、あらゆる芸術的技術を統一・・・ 宮本百合子 「一連の非プロレタリア的作品」
・・・ 諸新聞には、三土内相その他政党首領たちの言葉として、制限連記制が不適当な方法であったことを強調された。婦人代議士のどっさり出たことも、この不適当な選挙方法の欠陥のあらわれのように語られた。市川房枝女史も、今の日本に三十九名もの婦人代議・・・ 宮本百合子 「一票の教訓」
・・・ そこで判事や検事は、事件を社会問題としての面で強調して、生活苦ということを主張なさったわけです。けれども、どなたかふれられたように本人は生活苦じゃないといっているんです。そうすれば、あの殺した動機というのは、率直に申しますとつまりやけ・・・ 宮本百合子 「浦和充子の事件に関して」
・・・とを「民心一致」と強調した責任は、どこにあっただろうか。馬一匹よりもやすいものと命ぐるみ片ぱしから引っぱり出されたのは、人民である。やっと生きて帰って来た世間が冷たいのも、もとはといえば、不幸な人々を引っぱり出した同じその強権によって、愚弄・・・ 宮本百合子 「女の手帖」
・・・ときである。例えば、婦人に参政権が与えられたとき、あちこちに改めて「女らしさ」がとりあげられた。立候補した婦人たちは保守的な男女の一票をとり逃すまいとしてどんなに「女はどこまでも女らしく」と強調しただろう。はた目に気の毒なほど強調して「女こ・・・ 宮本百合子 「「女らしさ」とは」
・・・自分の裡に在る一部の傾向で理想化した女性の概念を直今日の事実に持って来て、それと符合しない処ばかりを強調して感じ失望したり、落胆したりしていたのである。 一口に云えば、自分は「人」から思想を抽象するのではなく、逆に、思想を人に割当て、或・・・ 宮本百合子 「概念と心其もの」
・・・ ところで自分はどうであろう。強調すべき点は気が済むまでも詳しく書こうとする。そのために空虚な語のはいって来ることには気づかない。従って多くを示唆する少ない語の代わりに、少なくを説明しようとする多くの語がある。しかも熱に浮かされた自分に・・・ 和辻哲郎 「生きること作ること」
・・・従って面相に現われた表情がまるで違っているように、肢体の姿、衣文の強調の仕方などもまるで違う。この塑像の様式がどういう道筋を通って推古仏の様式として現われて来たかについては、わたくしは何をいう権利も持たないのであるが、しかし証拠はなくとも、・・・ 和辻哲郎 「麦積山塑像の示唆するもの」
・・・その時にこそ、この顔面において、不必要なものがすべて抜き去られていること、ただ強調せらるべきもののみが生かし残されていることが、はっきり見えて来る。またそのゆえにこの顔面は実際に生きている人の顔面よりも幾倍か強く生きてくるのである。舞台で動・・・ 和辻哲郎 「面とペルソナ」
出典:青空文庫