・・・別して鹿狩りについてはつの字崎の地理に詳しく犬を使うことが上手ゆえ、われら一同の叔父たちといえども、素人の仲間での黒人ながら、この連中に比べては先生と徒弟の相違がある、されば鹿狩りの上の手順などすべて猟師の言うところに従わなければならなかっ・・・ 国木田独歩 「鹿狩り」
・・・ 兵士は、その殆んどすべてが、都市の工場で働いていた者たちか、或は、農村で鍬や鎌をとっていた者たちか、漁村で働いていた者たちか、商店で働いていた者たちか、大工か左官の徒弟であった者たちか、そういう青年たちばかりだ。小学校へ行っている時分・・・ 黒島伝治 「入営する青年たちは何をなすべきか」
・・・第八番、デューカーの「魔術師の徒弟」。第九番、ブラームス「ウンガリシェ・タンツ」というふうに楽曲の名前が並べてあるだけで、いったいどんなものを見せられるか全く見当がつかない。 さて、映写が始まって音楽が始まると同時に、暗いスクリーンの上・・・ 寺田寅彦 「踊る線条」
・・・もしこれがしかるべき心理学者によって研究されればその結果はわれら連句の徒弟に対して興味があり有益であるというだけでなく、一般心理現象中で他の場合にはあまり現われないような特異な潜在的現象を追跡し研究するための一つの新しい道を啓示するような事・・・ 寺田寅彦 「連句雑俎」
時 一九二〇年代処 盛岡市郊外人物 爾薩待 正 開業したての植物医師ペンキ屋徒弟農民 一農民 二農民 三農民 四農民 五農民 六幕あく。粗末なバラ・・・ 宮沢賢治 「植物医師」
・・・日本の工場学校と云えば体のいい徒弟養成所か、さもなければ製糸所の女工さんなどをプロレタリアの女として目ざまさない為に、いろんなブルジョアくさい女学校の型ばかりの真似をして、役にも立たない作文だの、活花だの、作法だので労働の中から自ずと湧く階・・・ 宮本百合子 「共産党公判を傍聴して」
・・・ 感化院では、よくなったと認められる少年たちを小僧や徒弟に出し、この世で一本立ちになる修業をさせるのであるが、小僧、徒弟の日暮しは、現在の日本では、まだまだ封建的な伝習の中につながれている。その見とおしに向って、一定の希望をつなぎ、常識・・・ 宮本百合子 「作品のテーマと人生のテーマ」
・・・日本の財閥が外見上解体されたとして、どうして徒弟制が絶滅したといえよう。バイブルに、男女は差別ある賃銀を、と書いてはなかろうが、カソリック教徒である日本の文相は、それらを教員たちとの係争点にしている。あらゆる市民が半封建的なものからの離脱を・・・ 宮本百合子 「作家の経験」
・・・を瞥見し、私は、文学に、何ぞこの封建風な徒弟気質ぞ、と感じ、更に、そのような苦衷、あるいは卑屈に似た状態におとしめられていることに対して、ヒューマニズムは、先ず、文学的インテリゲンチアをゆすぶって、憤りを、憤るという人間的な権利をもっている・・・ 宮本百合子 「十月の文芸時評」
・・・調査の手のゆき届かない、職工さんというより徒弟じみた条件で働いている少年少女工の数はどれ程だろう。そして、その稚い成長盛りの肉体に医学の鏡が向けられたら、果して何割が健康な体をもっているのだろうか。 雇主たちは、働いている人々が病気にな・・・ 宮本百合子 「若きいのちを」
出典:青空文庫