・・・ あの脚本は、私に智的にも、感情の上にもいろいろの閃きを与えて呉れたと云うことで、ほんとうに御礼を申します。又いずれゆっくりお目にかかりましょう。若し、私があの御本をとおして考えた貴女と云うものに大きな間違いでもしていたら、どうぞ御教え・・・ 宮本百合子 「大橋房子様へ」
・・・おハガキ頂きませば『仰日』の御礼のこころとしてお送りいたしますが―― わたくしはふとっていて、作品を通しての夫人はほっそりと小柄なお方のように思えます。よろしくおつたえ下さい。夫人はどんな本をおこのみでしょうか。〔一九五一年二月〕・・・ 宮本百合子 「歌集『仰日』の著者に」
・・・ ○絶間ない我ままと小言 「さあ、一寸これをよんでおくれ、まあ何て下らないんだろう、すぐピーターに御礼を云ってかえして下さい、――おや、お前さん、まだ着かえがすまないの、仕様のない人だこと、いつでも私はまたされる うんざりです・・・ 宮本百合子 「一九二五年より一九二七年一月まで」
・・・法 若い人何もその様におどろかぬとも良いのじゃ、王はわしに廃位の宣告状をお送りなされた御礼じゃもの。 ちとかるすぎるかも知れぬが、わしは貧しゅうてそれ丈のものほかもって居らなんだ。法王の群はしずかに動いて上手の戸口から・・・ 宮本百合子 「胚胎(二幕四場)」
・・・それは、明治二十何年という時代、三宅花圃、田沢稲舟などという婦人が、短篇小説を当時の文芸倶楽部にのせた時、出版書店は御礼として半衿一かけずつを呈上したということである。 現在、壮年になっている作家たちが、他の職業にたずさわる同年輩の男の・・・ 宮本百合子 「文学における今日の日本的なるもの」
・・・そして、あんな貧乏だのに御礼に金はどうしても貰わず、ただ、よい布と美しい絹糸を下さいというばかりなのです。お婆さんの家へ行くと、いつも鼠やげじげじが、まるで人間のように遊んでいるのも、皆には気味が悪かったのでしょう。 一本針の婆さんの処・・・ 宮本百合子 「ようか月の晩」
出典:青空文庫