・・・果せるかな、その夜から微熱が出て、きのうは寝たり起きたり、けさになっても全快せず、まだ少し頭が重いそうで蒲団の中で鬱々としている。あまり、人の作品の悪口を言うと、こんな具合いに風邪をひくものである。「いかがです、お加減は。」と言って母が・・・ 太宰治 「ろまん燈籠」
・・・母親が赤いものばかり欲しがる時には男の子だそうで、咲枝さんの蒲団と枕の赤さといったら少くとも私は微熱を発する程度ですから、多分すごい男の子なのでしょう。名はまだわかりません。女の子は桃子が可愛い名だけれども、字面が悪いので二の足をふんでいま・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・夏頃、健康が悪くなって寝汗をかき、微熱を出した。獄中で結核にかかり、一時重患におち入ったことのある宮本は、私の健康回復法としてきびしい規律的生活のプログラムを与えた。そのプログラムには、夜十時就寝、一日三回の検温、正しい食事、毎日午前中に巣・・・ 宮本百合子 「年譜」
出典:青空文庫