・・・建物と建物とを繋いだ直線の快適な落付きと、松葉の薫がいつとはなししみこんだような木地のままの太い木材から来る感銘とが、与って力あるのだ。 黄檗の建物としてはどちらが純正なものなのか。或は唯造営者の気稟の相異だけでこうも違うのか。私共は解・・・ 宮本百合子 「長崎の印象」
・・・騒音には誰しもあきているのだから、調和のある音楽の音の方をより快適とするのも自然となる。 ラジオで、人間の社会的な生活の表現である言葉は、言葉としての命を常に溌剌として保てるよう、本気で考えられなければなるまいと思う。「わかりました」か・・・ 宮本百合子 「ラジオ時評」
・・・大いに冒険心と快適な娯楽心とを満足させ夜更けてから元の門近くまで戻って来たところで腕を捕まえられた。が、オウバアン一台を盗む意志はないのだし、事実盗んだのではないし、ジョンソンは既に何十人かの先輩の例にならって一寸娯楽ドライヴに借りたんです・・・ 宮本百合子 「ロンドン一九二九年」
・・・そのため生理的にも今までになく快適を感じていたらしかった。 先生が製作によって生の煩わしさを超脱する心持ちは、私の記憶では、『草枕』や『道草』などに描かれていたと思う。一三 私はきわめて概括的な、そのくせバラバラになった・・・ 和辻哲郎 「夏目先生の追憶」
出典:青空文庫