・・・ バルザックの氾濫的な芸術作品の中に如何なる大きい矛盾があったればこそ、嘗ては急進的であったインテリゲンツィアの一部がその生活と文学とから階級性を抹殺している今日の日本に、かくも広汎な鑑賞をよび起しているのであろうか? 私達はその秘密を・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
・・・ 父は社会的に支配階級の或る構成要素としての地位をしめ、母は息子との父よりひんぱんな日常的接触と、若い息子への愛にひかされ急進化し、父は反動化し、矛盾はその思想問題が日本の家庭内の封建性によって、結局母により深い秘密を持たしめるに到って・・・ 宮本百合子 「婦人作家は何故道徳家か? そして何故男の美が描けぬか?」
・・・ 無理がとおれば道理がひっこむ、といういろは歌留多の悲しい昔ながらの物わかりよさが、感傷をともなった受動性・屈伏性として、急進的な大衆の胸の底にも微妙な形に寄生している。プロレタリア作家が腹の中でその虫にたかられている実証は、「白夜」そ・・・ 宮本百合子 「冬を越す蕾」
・・・ ヨーロッパ諸国からロシア風の情熱とよばれたロシアの十九世紀から二十世紀のはじめに、ロシアのインテリゲンツィア婦人の一部は決して眠ってはいなかった。急進的な教養のある若い婦人達の人民解放運動への参加は目醒しかった。革命家としてのヴェラ・・・・ 宮本百合子 「プロレタリア婦人作家と文化活動の問題」
・・・その時分ゴーリキイは回想の中にも書いている通り、当時のソヴェト同盟の政策に全部的な同感を持つことが出来ず、急進的なインテリゲンツィアを中心とする『新生活』という雑誌を編輯してレーニンに対するブルジョア世界のデマゴギーに対して闘いつつも、一方・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイによって描かれた婦人」
・・・ これがきっかけとなり、当時のカザンに於けるナロードニキを主とする急進的なインテリゲンツィアとゴーリキイとの接触がはじまった。ゴーリキイは、墓場の濃い灌木の茂みの中でもたれる彼等の集りに行った。すると、彼等は波止場稼ぎの若者であるゴーリ・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
・・・この注目すべき性質の対立は、ゴーリキイが十五歳になり、カザン市へ出かけて当時の急進的学生たちとの交渉が始まるにつれ、一層その社会性、歴史性に於て複雑な内容をもって深められ、発展するに至ったのである。 十五歳でもゴーリキイは既に自分を年よ・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの発展の特質」
・・・ ゴーリキイは、淫売婦や貧しい大学生、人生での敗残者などがごたごた棲んでいるカザンの貧民窟の一隅に、急進的な一人の学生と暮した。そこにはたった一つの寝台があるだけであった。学生とゴーリキイとは夜昼交代にそこへ寝て、ゴーリキイはヴォルガ河・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの人及び芸術」
・・・と考えたり、それら急進的な人々は「大学とすべての高等教育を廃止する」ものだという間違った説明をふきこまれたまま怒っている姿は哀れである。 ロシアの一八六〇年代から八〇年代は、単にロシアにとってばかりでなく世界の人類の進歩、解放の歴史に大・・・ 宮本百合子 「マリア・バシュキルツェフの日記」
・・・ ゴーリキイは淫売婦や貧しい大学生、人生の敗残者などがごたごた詰っているカザン市の貧民窟の一隅に、或る急進的な学生と暮した。 寝台が一つしかなかった。学生とゴーリキイとは夜昼かわり番こにその寝台に眠り、朝になるとゴーリキイは「飢えな・・・ 宮本百合子 「逝けるマクシム・ゴーリキイ」
出典:青空文庫