・・・ もとより悪質な諸犯罪、殺人、お家騒動のからくりに対しては、十分専門家としての追究が必要とされる。これから実現する戦時利得税、財産税をすりぬけようとして、大小の各財閥が工夫をこらすであろう術策などは、きっとその専門家的欲望の対象となるで・・・ 宮本百合子 「石を投ぐるもの」
・・・ こういう工場内の悪質な分子を、労働者出の管理者及び彼を支持する労働者群がどんな困難を経て、克服して行くかといういきさつは、キルションの有名な戯曲「レールは鳴る」にもよく表現されている。 インガ・リーゼルが、知識階級から出た、教育と・・・ 宮本百合子 「「インガ」」
・・・民間のいろいろの業者・経営者にとって、月給はともかく現金では半額だけ手わたせばいいということは、不便な方法ではなかろう。悪質の支払主は、そこに相当の才覚と無恥とをくりひろげることは火を見るよりも明らかなのだから。そうしたら、うちはどうしてや・・・ 宮本百合子 「家庭と学生」
・・・ アメリカでもヨーロッパでも、真実な文化人、芸術家たちは、文化・芸術の悪質な商業化に対して、いつも戦って来た。科学者たちも、この闘いには参加している。これらの人々は、自分たちの国の経済事情に、民主主義というもののより高い発展がもたらされ・・・ 宮本百合子 「木の芽だち」
・・・とくに本年度の悪質大衆課税として批難をうけながらついに国会を通過した物品取引税は、総額二七〇億円の収入を予定されていて、この取引税が時計の修繕にも靴の底なおしにも、映画や芝居をみるときにさえも消費者の負担となってくる。各取引ごとに一パーセン・・・ 宮本百合子 「今日の日本の文化問題」
・・・、復員軍人、旧戦犯、悪質の「民同」がうようよしていて、「高度武装」たる計画的な犯罪の挑発、捏造事件で人民の民主化を抑圧するために活躍している。 世界の民主主義者、良心ある人々が、国際ファシズムの一つの動きとして、MRAを批判していること・・・ 宮本百合子 「再武装するのはなにか」
・・・ 公私逆立った既成政党の腐敗が、忽ち、婦人参政の新しい地域まで悪質な性病のような急スピードで蔓延しつつある。戦争犯罪によって頭株をとられた進歩党が、築地の待合に共産党をのぞく各派の主だつ婦人たちをよんで、出席した者に、進歩党内の重要なポ・・・ 宮本百合子 「逆立ちの公・私」
・・・きょうの私たちの生きる社会の現実の裡にあっては、悪質な反動として民衆の一般化・全体化観念に対して、民衆そのものの内的要因としての反動性と進歩性との相異をとらえ、同時に知識人の間に急激に生じている同様の分化の本質を理解し、その二つのものの結合・・・ 宮本百合子 「全体主義への吟味」
・・・わたし達が近代的外皮に装われた最も悪質な封建性から自身の全生活を解放して、民主主義に立つ眺望ひろい人生を確保しようとするならば、活字面だけの間に思想性をかきさがさず、何より先に、自分の生活実体をはっきり自分のものとして把握しなければならない・・・ 宮本百合子 「「どう考えるか」に就て」
・・・ 古代奴隷社会を説きつつ、この著者が、昨今日本の反動的な一部の文芸家によって極めて悪質に利用されている「経済学批判の序論」の末尾でマルクスがギリシャ芸術の「順当な」達成にふれて云っている言葉を、決してマルクス自身「絶対的に美化していない・・・ 宮本百合子 「新島繁著『社会運動思想史』書評」
出典:青空文庫