・・・のみならず直孝は家康に謁し、古千屋に直之の悪霊の乗り移ったために誰も皆恐れていることを話した。「直之の怨むのも不思議はない。では早速実検しよう。」 家康は大蝋燭の光の中にこうきっぱり言葉を下した。 夜ふけの二条の城の居間に直之の・・・ 芥川竜之介 「古千屋」
・・・罪が悪霊の単独の誘惑の結果であるという考えは、嘗て彼等に起った事が無かったのである。エデンの園の蛇でさえ彼等の眼には、勝手に神の命令にそむいたアダムやエバより悪くはなかったのだ。けれども、ザラツストラの教義の影響を受けて、ユダヤ人も今はエホ・・・ 太宰治 「誰」
・・・ねんねんと動き、いたるところ、いたるところ、かんばしからぬへまを演じ、まるで、なっていなかった、悪霊の作者が、そぞろなつかしくなって来るのだ。軽薄才子のよろしき哉。滅茶な失敗のありがたさよ。醜き慾念の尊さよ。 Confite・・・ 太宰治 「碧眼托鉢」
・・・ 私は嬉しい。ほんとに、ほんとに嬉しい」と、躍り上るような字で書きつけた鉛筆を、投げ出した彼女は、せっかく書いた字が皆めちゃめちゃになってしまうほど、涙をこぼした。 悪霊のような煩悶や、懊悩のうちに埋没していた自分のほんとの生活・・・ 宮本百合子 「地は饒なり」
・・・兄弟愛 和解 「悪霊」を読んでみたい。 Dのリアリズム 自然主義とのちがい○顕微鏡の力と予言者の視力とをかね備えた 彼の幻想家的な知力にとむリアリズム、p.202○一切を彼は不思議に内部から・・・ 宮本百合子 「ツワイク「三人の巨匠」」
出典:青空文庫