・・・を復活させようとするファシズムの明らかな意図と、しっかりたたかわなければならないという必要がおこっている。戦争によってこれだけ深い犠牲をはらった全日本の女性の、将来の戦争と再びはびころうとしているファシズムへのつよい反対がないならば、女性の・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十五巻)」
・・・ 司会者の何か特別な意図がふくまれていたのであろうか、 祝宴の主人公であるその画家の坐っている中央のテーブルは、純然の家族席としてまとめられている。夫人、成人して若い妻となっている令嬢、その良人その他幼い洋服姿の男の子、或は先夫人か・・・ 宮本百合子 「或る画家の祝宴」
・・・監督の意図では沙漠というものの持つ広大な自然力と小さい人間との対照、並に小さい躯に盛られている人間の自然に対する闘争力を描いて、中尉ルドヴィッチの人間的再出発の説明にあてようとしたのであったかも知れない。残念ながらこの意図は完全に失敗してい・・・ 宮本百合子 「イタリー芸術に在る一つの問題」
・・・現在では、すべての封建的な意図が、その表現はかならず日本の民主化と復興のため、といういいまわしをもちはじめた。 最近あらわれた元看守のファシストである暗殺者さえ、属する団体は民主化同盟という名をもっている。もういっそう手のこんでいる政治・・・ 宮本百合子 「偽りのない文化を」
・・・私は、今日女性の心の中には、新たに目覚めた人としての燃えるような意図と共に、過去数百年の長い長い間、総ての生活を受動的、隷属的に営んで、人及び自分の運命に対しては、何等能動的な権威を持ち得なかった時代の無智、無反省、無責任の遺物が潜んでいる・・・ 宮本百合子 「概念と心其もの」
・・・戦争に反対し、軍国主義の非人間的だった時期の日本の悲劇を描くとされているのであるけれども、榕子という女性を描いている作者のその意図について疑いをもたされる人は少くないだろうと思う。わたくしとはいわず、あたくしと、はやりどおりにいうこの女性は・・・ 宮本百合子 「傷だらけの足」
・・・そこに現われたのは写実によって美を生かそうとする意図ではなく、美しい色と線との諧和のために、自然の内からある色と線とを抽出しようとする注意深い選択の努力である。現実の風景を描いた画すらも、画家の直接の印象が現われているという気はしない。画家・・・ 和辻哲郎 「院展遠望」
・・・それはこの神々を苦しむ神として示そうとする意図を作者が持っていることの明らかな証拠である。そういう意図が、日本の民間説話である長者伝説を材料として、非常に力強く表現せられているところを見ると、苦しむ神の観念が日本の民衆のなかから湧き出て来た・・・ 和辻哲郎 「埋もれた日本」
・・・伝説では、殉死の習慣を廃するために埴輪人形を立て始めたということになっているが、その真偽はわからないにしても、とにかく殉死と同じように、葬られる死者を慰めようとする意図に基づいたものであることは、間違いのないところであろう。そういう埴輪の形・・・ 和辻哲郎 「人物埴輪の眼」
・・・藤村はそれを取り上げて、「私があの『新生』で書こうとしたことも、その自分の意図も、おそらく芥川君には読んでもらえなかったろう」と嘆いている。 ところで私もまた、『新生』が出始めた時分に、主人公が女主人公の妊娠を知って急に苦しみ始める個所・・・ 和辻哲郎 「藤村の個性」
出典:青空文庫