・・・とか発言することができずに、「汝の意欲の準則が普遍的法則たり得るように行為せよ」とか、「汝の現在の態度について、汝自身に忠実であり得るように態度をとれ」とかいい得るのみである。すなわち人間のあらゆる積極的な意欲はことごとく、道徳の実質であっ・・・ 倉田百三 「学生と教養」
・・・時代が憂鬱ならば時代を転換せんとの意欲は起こらないのか。社会革新の情熱や、民族的使命の自覚はどこにおき忘れたのであろう。反逆の意志さえなきにまさるのである。永遠の恋、死に打ちかつ抱擁、そうしたイデーはもう「この春の流行」ではないとでも思って・・・ 倉田百三 「学生と生活」
・・・僕がいま、はっきりさせた半面は、僕の意欲したところのもの。僕みずから動かした僕の発条。これこそ勇気であり、力であると御記憶ありたい。」「なんのことはない、僕は市井の正義派であった。」白面の文学青年、アンドレ・ジッドに与う。「早く男らしくなっ・・・ 太宰治 「碧眼托鉢」
・・・ある人の説のごとく、芸術は在るところのものの再出現ではなくて、在ってほしいものへの意欲の演出であるとすれば、これらの映画はヤンキーにとっては最高の芸術である。これらの映画を見ることはすなわち観客みずから踊り歌い、放縦な高速度恋愛をし、やたら・・・ 寺田寅彦 「映画時代」
・・・まだ解決されつくしていない社会的な課題であることが告げられているのではなかろうか、結婚や家庭の本質について伸子のもった疑問、親子・夫婦の繋りを重く苦しいものにする様々の考えかたから互に解かれようとする意欲。人間同士の愛とか理解とか呼ばれるも・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第六巻)」
・・・佐田は神経的に正義派的に、彼の認識の中で一般化されている児童の「意欲をもたぬ幼年期の純真さ、無邪気さ」、創意性などを計量し、「労作にむすびついた教育、具体的実践に結合した」教育こそ小学教育の基礎であると感じる。 たとえば「窓ふき」という・・・ 宮本百合子 「一連の非プロレタリア的作品」
・・・破滅的現象は街にも家庭にもあふれ出ているのに、若い眼も心も崩壊の膿汁にふれていながら、事実は事実として見て、生活でぐっとそれによごされず突破してゆくような生活意欲はつちかわれていない。若さは無意識のうちにこんにちの姑息ないいくるめや偽善をも・・・ 宮本百合子 「偽りのない文化を」
・・・開かれた扉の際の際まで、人民の意欲として生活的文学的創造の力が密集していて、それは奔流となってほとばしり、苦悩と堅忍と勝利への見とおしを高ならせたであろう。その潮にともに流れてこそ、作家は、新しい文学の真の母胎である大衆生活のうちに自身の進・・・ 宮本百合子 「歌声よ、おこれ」
・・・々ひっこぬかれてダラ幹ばかりのこされた東交の中にでも、いろいろなやりかたでその活動を年中警察に妨害され苦境にいる無産者托児所の中にでも人民が自分たちの生活と職場を守り、権力とたたかってゆこうとしている意欲は決して潰滅しきっているのでないこと・・・ 宮本百合子 「解説(『風知草』)」
・・・について書いている部分などにも、著者のこの生活の意欲は現れている。氷河が太古に地球の半を包んだように、何千万年かの後にはまた地球をひろく被うようになるかもしれない。しかし、そうなれば、人間は南へ移住することができる、とコフマンはいっている。・・・ 宮本百合子 「科学の常識のため」
出典:青空文庫