・・・ これらの作品は、非常に複雑で熱い意欲をたくみに圧縮しつつ心を打つ力をもっていると思われますし、別な例では、ようやく終った所長の訓示ヒヤカシ半分に拍手浴びせワッと喊声あげて職場へ引き上げる。など、・・・ 宮本百合子 「歌集『集団行進』に寄せて」
・・・愛し、拡大し、創造しようとする意欲は愛すべきものです。 けれども、憐れな、力ばかりある強い愛は、それを充分に導く叡智の多量を蔵さないばかりに、自分の力を持てあまして自分を傷け、殺してしまうのです。 私にとっては、自分の「まことなるも・・・ 宮本百合子 「偶感一語」
・・・しかも作家はこのような事象の表現にしか、その表現意欲を感じなくなっているのである。 なぜなら、作家は、心理の叙述を自己のもっとも生甲斐ある創作対象とするようになっており、心理のうちでも心のもつ反省の能力をあらわしたいと念じているのである・・・ 宮本百合子 「芸術が必要とする科学」
・・・仕事というのは、あるひとの生活意欲の社会的価値への転化具体化であるのではないでしょうか。人に見せるためではない。人に聞いたり、読んだりして貰う為ではない。本当に私一人の慰みのためにという表現で女のひとが、自分の余技、仕事を語る。特に日本では・・・ 宮本百合子 「現実の道」
・・・幸福であろうとする意欲は、人類が幸福という言葉の符号も、文字としての記号も持たなかったときから存在しつづけている。人類が社会を構成しはじめてから、それについての認識をもちはじめて以来、より幸福に、より快適に生きようとする希望から築きあげてき・・・ 宮本百合子 「現代の主題」
・・・民主的批評は、よい文学として、それをよむ人々の胸に訴え、おちいっている矛盾からの発展的脱出を意欲させ得るものでなければならない。批評も、平和のためにたたかい民族の愛のためにたたかいつつある人民的な人格の力と火とをもたなければなるまい。・・・ 宮本百合子 「現代文学の広場」
・・・ ゴーリキイの生涯の結びと小林の生涯の終りとは、だから、人類の歴史的な発達の展望の上に立って眺めると、決して本質的に幸福、不幸と分けられる種類のものではなく、質に於ては同一の人間的な意欲が、おかれている社会的・箇性的事情との相互的な関係・・・ 宮本百合子 「「ゴーリキイ伝」の遅延について」
・・・その席では、二十世紀のこの時期に動いている世界社会の苦悩、相剋、発展へのつよい意欲とその実験にかかわる文学の、原理的な諸問題について究明される態度は全く消された。印象批評と放談のうちに、ジャーナリズムと読者とに対するある種のデモンストレーシ・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・著者がその惨苦に耐えた火のような生きる意欲そのもののはげしさ、生存のためにむきだしにたたかった、それなりの率直さで、現象から現象へ、エピソードからエピソードへと押しきる流れで語られている。 読者は次々と展開する插話にひきいれられて、口を・・・ 宮本百合子 「ことの真実」
・・・小林多喜二全集は、世代の発展的意欲の表現として、思いもかけない人々からの協力をうけながら発刊の運びになった。 小林多喜二が虐殺された一九三三年二月からきょうまでの十五年間、全集刊行のことは忘れようにも忘れられなかった。小林の死の直後日本・・・ 宮本百合子 「小林多喜二の今日における意義」
出典:青空文庫