・・・ かりに、私が、愛書家であり、蔵書家であっても、それで満足がされます。なぜなら、自分の限りある一生の間にそれだけの長い月日、書斎を飾れば沢山だからです。遠く後世を考えるなら別に、図書館があります。私は、人の命のはかなさ、書物の持つ生命の・・・ 小川未明 「書を愛して書を持たず」
・・・かの国の有名な画廊にある名画の複製や、アラビアンナイトとデカメロンの豪華版や、愛書家の涎を流しそうな、芸術のための芸術と思われる書物が並んでいて、これにはちょっと意外な感じもした。そのほかになかなか美しい人形や小箱なども陳列してあったが、い・・・ 寺田寅彦 「火事教育」
・・・この異彩ある珍書は著者、解説者、装幀意匠者、製紙工、染織工、印刷工、製本工の共同制作によってできあがった一つの総合芸術品としても愛書家の秘蔵に値するものであろう。ただ英文活字に若干遺憾の点があるが、これもある意味ではこうした限定版の歴史的な・・・ 寺田寅彦 「小泉八雲秘稿画本「妖魔詩話」」
出典:青空文庫