・・・牽牛織女のおめでたを、下界で慶祝するお祭りであろうと思っていたのだが、それが後になって、女の子が、お習字やお針が上手になるようにお祈りする夜なので、あの竹のお飾りも、そのお願いのためのお供えであるという事を聞かされて、変な気がした。女の子っ・・・ 太宰治 「作家の手帖」
・・・老生の初陣を慶祝するが如き風情に有之候。老生はただちに身仕度を開始せり。まず上顎の入歯をはずし、道路の片隅に安置せり。この身仕度は少しく苦笑の仕草に似たれども、老生の上顎は御承知の如く総入歯にて、之を作るに二箇月の時日と三百円の大金を掛申候・・・ 太宰治 「花吹雪」
・・・という曲を奏した。慶祝の意を表わしたもので、参会の諸員退出の時にこれを奏すと説明書にあったが、そのためか、奏楽中にがたがた席を立つ人が続々出て来た。 近頃にない舒びやかな心持になって門を出たら、長閑な小春の日影がもうかなり西に傾いていた・・・ 寺田寅彦 「雑記(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
・・・ことを慶祝している。 戦後の出版界の空さわぎは、出版社というものが、つまりはブローカー的存在であって、自分が何一つ生産手段をもってなくても、当る原稿をとることさえ成功すれば、相当の利ざやを掠めとることが出来たからである。戦時中、大軍需会・・・ 宮本百合子 「しかし昔にはかえらない」
出典:青空文庫