・・・ それでは大学入学の資格はどうしてきめるかとの問に対して、「偶然に支配されるような火の試練でなく、一体の成績によればいい。これは教師にはよく分るもので、もし分らなければ罪はやはり教師にある。教案が生徒を圧迫する度が少なければ少ないほ・・・ 寺田寅彦 「アインシュタインの教育観」
・・・こんな成績の好いのは軍隊でも珍らしいというでね…… それだから秋山大尉を捜すについちゃ、忰も勿論呼出されて、人選に加わったと云う訳なんで…… それで三十人の兵士は一度に河へ飛び込んだ。けど何しろ時間が経っている。それに河巾も広い、深・・・ 徳田秋声 「躯」
・・・事業の成績は必ずしも問うところでない。最後の審判は我々が最も奥深いものによって定まるのである。これを陛下に負わし奉るごときは、不忠不臣のはなはだしいものである。 諸君、幸徳君らは時の政府に謀叛人と見做されて殺された。諸君、謀叛を恐れては・・・ 徳冨蘆花 「謀叛論(草稿)」
・・・少年が夢中で昨日済んだ学期試験の成績を話し出す。突然けたたましく泣き出す赤児の声に婆芸者の歯を吸う響ももう聞えなくなった。乗客は皆な泣く子の顔を見ている。女房はねんねこ半纏の紐をといて赤児を抱き下し、渋紙のような肌をば平気で、襟垢だらけの襟・・・ 永井荷風 「深川の唄」
・・・更に生徒の学年成績に匹敵すべきものである。僅一行の数字の裏面に、僅か二位の得点の背景に殆どありのままには繰返しがたき、多くの時と事と人間と、その人間の努力と悲喜と成敗とが潜んでいる。 従ってイズムは既に経過せる事実を土台として成立するも・・・ 夏目漱石 「イズムの功過」
・・・当初の計画通りを実行してそうして旨く見込に違わない成績をふり返って見て、なるほどと始めて合点して納得の行ったような顔をするのは、いくら綺麗に形だけが纏っていても実際の経験がそれを証拠立ててくれない以上は大いに心細いのであります。つまり外形と・・・ 夏目漱石 「中味と形式」
・・・色々実験の成績もございますから後でご覧を願います。又病弱者老衰者嬰児等の中には全く菜食ではいけない人もありましょう、私どもの派ではそれらに対してまで菜食を強いようと致すのではありません。ただなるべく動物互に相喰むのは決して当然のことでない何・・・ 宮沢賢治 「ビジテリアン大祭」
・・・をつくり都会の大工場で同じ機械を使って造り出す能率の二倍以上の成績を、農村の子女によってあげている。智能と資本とを縦横に駆使して、イギリスの良品高価に対する良品廉価生産・高賃銀低コストを目ざす科学主義工業という呼び名が、これらの人々によって・・・ 宮本百合子 「新しい婦人の職場と任務」
この間日比谷の公会堂であった自由学園の音楽教育成績発表会へ行って、それについての様々な感想につれて、自分たちが小さかった頃の生活のうちに、音楽がもたらしたあれこれの情景をなつかしく思いおこした。 もうふた昔三昔のことで・・・ 宮本百合子 「きのうときょう」
・・・佐野も東京には出て見たが、神経衰弱の為めに、学業の成績は面白くなく、それに親戚から長く学費を給してくれる見込みもないから、お蝶が切に願うに任せて、自分は甘んじて犠牲になる。」書いてある事は、ざっとこんな筋であったそうだ。 川桝へ行く客に・・・ 森鴎外 「心中」
出典:青空文庫