・・・あらゆる形で大衆課税がとりたてられ、たとえ所得税の税率がいくらか引き下げられたとしても、汽車賃の二倍半までの増額、公定価格の七割ほどの引上げ、通信料の四倍、煙草の二割から八割の値上げは、あらゆる家計を破綻させている。とくに本年度の悪質大衆課・・・ 宮本百合子 「今日の日本の文化問題」
・・・生活の困難は益々おびただしく、いまでは国民所得の七割が税になって、不安定も底をついたと云っていいほどだし、六・三制の予算は、僅か七億にきりちぢめられた。闇買いをしないために営養失調から死んだ判事の問題が新聞に報じられているし「葦折れぬ」とい・・・ 宮本百合子 「再版について(『私たちの建設』)」
・・・ 税と云えば、東芝のような大企業が、所得税の滞納のため財産の一部を公売にふされた。外聞がわるそうな公売で、東芝の生産した不合格品のストックや、会社として負担になっていたけれども潰してしまえなかった下請け工場の整理が出来て――労働者をクビ・・・ 宮本百合子 「正義の花の環」
・・・その同じ人々が、三十五倍の都民税をはらう義務は遂行し、所得を実質的には1/3にしてしまう所得税をはらい、言論抑圧に等しい紙不足に服し、あれこれの投票をして社会生活をしていることについて我から怪しまないのはふしぎである。現に自分が屈伏しつつあ・・・ 宮本百合子 「政治と作家の現実」
・・・人民の所得は戦前の百倍と査定している政府が、百二十六倍の税額を払わせる時、私たちの文化費はどこに残るでしょう。文化と文学の発展は、社会の生産や権力の性質とこんなにも切りはなせないものだということを、本年度はすべての人が切実に発見する年でもあ・・・ 宮本百合子 「一九四七・八年の文壇」
・・・○彼は自己の生存の外的危険から最高の内的確実性を獲得し、苦悩は彼にとって所得となる、○彼の芸術における悪魔的な価値変革力、○運命に対する人間の勝利は、内面的魔術による外的存在の価値変革に外ならないという点から見れば 彼の生活は芸・・・ 宮本百合子 「ツワイク「三人の巨匠」」
・・・ソヴェト同盟は世界第二位の生産と国民所得をもつ国となった。労働時間は八時間から七時間になった。失業は根絶され、労働者の平均賃銀は二倍強に上っている。ひきつづいて一九三七年までに行われる第二次五ヵ年計画で、ソヴェト同盟の労働者農民は更に社会主・・・ 宮本百合子 「ドン・バス炭坑区の「労働宮」」
・・・勤労所得税は五千円以上になると、賃銀から天引きされる率があんまりひどいから、鉱山に働く人々は、五千円以内に自分の賃銀をとどめて置こうとしているのだそうです。炭坑の封建的な重労働では、賃銀を五千円以上にとるだけ石炭を採掘することは、相当のがん・・・ 宮本百合子 「婦人大会にお集りの皆様へ」
・・・税務署も、文筆家は、ほかの勤労とちがうとして、開業医、弁護士なみの所得税徴収の基準をたてている。私たちは、作家という社会的な仕事を、現実に自分の企業として行っていない。労作の努力、そのかげにかくされた永い歳月の辛苦、それらは一枚いくらという・・・ 宮本百合子 「文化生産者としての自覚」
・・・妻の所得の保護。ソヴェトの婚姻法。フランスにおける内縁問題。結婚優生学。これらの各項をそれぞれの専門家が執筆している。第二巻法律篇は、婚姻法概論からはじまって、妻の無能力。内縁。国際婚姻法。最後に民法改正要綱解説として、穂積重遠博士が序言及・・・ 宮本百合子 「若い婦人のための書棚」
出典:青空文庫