・・・「先生もみんなを手伝うぞ! みんなの仲間入りするぞ!」そうして、素早く雑巾を握ると、まるで夜のあけたような心で割り込んで行った。生徒たちが若い先生の主観的な亢奮ぶりにキョトンとすると、彼は「肥えたるわが馬、手なれしわが鞭」と「精一杯の声を張・・・ 宮本百合子 「一連の非プロレタリア的作品」
・・・ 十九日 ホテルで一緒に食事をし、夜はグランパがダディの packing を手伝う。三人で、夜フィテアにかえる。 二十日 ダディを二時四十分の汽車に見送り、三人でサブに乗り、村川氏に会いたいと云うので、送ろうとするAを強いて・・・ 宮本百合子 「「黄銅時代」創作メモ」
・・・海女の働いている地方では、母さんや姉さんについて、いつとはなし小さい女の子も海の働きになれてゆくのだけれど、そうでない海岸の小学校に通っている位の女の子たちは、大人の女の働くとき交って手伝うだけで、これまでは格別な新しい工夫を盛った生活的な・・・ 宮本百合子 「漁村の婦人の生活」
・・・ ○ニコライの翻訳を手伝う人に、京都の中西ズク麿さんという男あり。大した学者。不具。手足ちんちくりんで頭ばっかり大きい。歩くに斯うやってアヒルのように歩く。その人がニコライの助手で「さあズクマロさん仕事をしましょう」と笑い乍らニコライ、・・・ 宮本百合子 「一九二五年より一九二七年一月まで」
・・・出征軍人の見送り、出迎え、傷病兵慰問、官製婦人団体が組織する細々とした労働奉仕――例えば米の配給所の仕事を手伝うために、孔の明いた米袋を継ぐために集るとか、婦人会が地区別に工場へ手伝いに出るとか、陸軍病院へ洗い物、縫物などのために動員される・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
・・・女の子だからお台所を手伝うというのじゃなく、お母さんが忙がしいから……なのです。 日本とちがって、忙がしい時には皆な助け合って働く事を愉快に思って居ります。それがアメリカの少女です。日本の少女だって今にアメリカの少女に負けないようになり・・・ 宮本百合子 「わたくしの大好きなアメリカの少女」
・・・もう夜になって小萩が来ても、手伝うにおよばぬほど、安寿は紡錘を廻すことに慣れた。様子は変っていても、こんな静かな、同じことを繰り返すような為事をするには差支えなく、また為事がかえって一向きになった心を散らし、落ち着きを与えるらしく見えた。姉・・・ 森鴎外 「山椒大夫」
出典:青空文庫