・・・ 十一月の文芸時評で、平野謙氏が、日本の自然主義以来の文学伝統の分析からこの点にふれ、作家が何によって書くかということの血路的打開の標本として、中野重治氏の「空想家とシナリオ」の車善六という人物の出現、伊藤整氏の得能五郎の存在、徳永直氏・・・ 宮本百合子 「今日の文学の諸相」
・・・これは、華やかなるべき文芸復興の芸術的内容の貧寒さからその打開策として言われて来たのであった。同じ頃古典の摂取ということが文壇でやかましく言われ、バルザック、スタンダール、ドストイェフスキー等が読み直され始めた。だがこの古典の摂取も作家の豊・・・ 宮本百合子 「今日の文学の鳥瞰図」
・・・現実の難関を打開しようとする行動主義文学の不可能性をつく提言は、公式主義、機械主義として迎えられた。而して、行動主義文学、能動精神の声は、単に、『文学界』の芸術至上的、抽象的風潮への解毒剤として一般に迎えられたばかりでなく、プロレタリア文学・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・ 三 現代文学は創作方法において、益々行きづまって来ていて、文壇とジャーナリズムの文学意識では、打開するに道も見出しにくい有様になった。 一人一派的な文学上の独創性を求めて、同人雑誌によるとしても、徒労・・・ 宮本百合子 「しかし昔にはかえらない」
・・・あの映画が現在のアメリカが経済的な行詰りを感じていながら、それを徹底的な方向で打開し得ず人々の心がまた現在自分たちの置かれている矛盾や困難を写実的にとりあげた作品を喜ばないような逃避的な気持にいる、その一面の現れがあの映画にでている訳でしょ・・・ 宮本百合子 「女性の生活態度」
・・・その困難な仕事に比べると、各作家の内部の現実にとってもずっと手軽で耐え易く、即効的である題材での打開策、というより、やや彌縫の策がとられたことは、その後の二三年間に他の事情とも絡んで文学を非文学的なものにする多くの危険の遠因となったとともに・・・ 宮本百合子 「人生の共感」
・・・それは気力をふるい立たせ、計画ある行動に立たせて窮地を打開させる力となって来た。 けれども、今日私たちが、自分一人が頼り、という雄々しい決心のその現実の内容をこまかくしらべたとき、生を守る智慧はどんなに深く大きくあらねばならないかという・・・ 宮本百合子 「世界の寡婦」
・・・と呼応して取りあげられたのであるが、私たちの注意をひく点は、ブルジョア文学におけるこれらの諸課題=リアリズムの問題も、外国の古典作品の研究、明治文学の再吟味などすべてが、文学創作にとって実際上新生面を打開する積極的な役割ははたし得ず、かえっ・・・ 宮本百合子 「一九三四年度におけるブルジョア文学の動向」
・・・ 本年度は勤労人民の中からの文化活動は、経済的な苦痛を打開しようとするたたかいとともに活溌になります。組織的にいえば、組合の文化部は前年度の経験によって、だんだん文化の過小評価をなくしてきたし、サークルの指導者たちは文学その他の文化的活・・・ 宮本百合子 「一九四七・八年の文壇」
・・・そして、そういう火野葦平の文章ののっている朝日の同じ紙面のすぐ側に、米の配給に関する困難打開会議の記事も出ていた。「帰還兵の言葉」の筆者は、一つ紙面にそのように並びあってあらわれた、自分の言葉の内容とその隣りの記事の内容とを、この現実のなか・・・ 宮本百合子 「地の塩文学の塩」
出典:青空文庫