・・・三人の友だちとは、俳人の露柴、洋画家の風中、蒔画師の如丹、――三人とも本名は明さないが、その道では知られた腕っ扱きである。殊に露柴は年かさでもあり、新傾向の俳人としては、夙に名を馳せた男だった。 我々は皆酔っていた。もっとも風中と保吉と・・・ 芥川竜之介 「魚河岸」
・・・ お澄は白い指を扱きつつ、うっかり聞いて顔を見た。「――お澄さん、私は折入って姐さんにお願いが一つある。」 客は膝をきめて居直ったのである。 四 渠は稲田雪次郎と言う――宿帳の上を更めて名を言った。画・・・ 泉鏡花 「鷭狩」
・・・ 苅った稲も扱きばしで扱き、ふるいにかけ、唐臼ですり、唐箕にかけ、それから玄米とする。そんな面倒くさい、骨の折れる手数はいらなくなった。くる/\廻る親玉号は穂をあてがえば、籾が面白いほどさきからとび落ちた。そして籾は、発動機をかけた自動・・・ 黒島伝治 「浮動する地価」
出典:青空文庫