・・・ 朝鮮の国内戦は、急速に日本における平和の欲求とその発言・行動を抑制する方向に利用された。朝鮮にいる朝鮮人の間にたたかわれるたたかいは、アメリカでかつて行われた国内戦――南北戦争と同じ、その国の人々同士のたたかいである。日本でベスト・・・ 宮本百合子 「戦争はわたしたちからすべてを奪う」
・・・重ねた仕事着姿の被告たちにまじって、ただ一人きちんとネクタイをつけ上着のボタンをかけた背広服姿の竹内被告が、腹の下に両手をくみ合わせ、やや頭を左に傾けた下眼づかいに正座している当日の彼の写真は、全身の抑制された内向的な表情によっても、同じベ・・・ 宮本百合子 「それに偽りがないならば」
・・・はじめにふれたような幼年・少年時代の特別な境遇のために人に対して簡単に率直でない習慣がついたというばかりでもなく、父親であった人の性格をどこかうけついでいるらしくも思える藤村は、対人関係においては常に抑制したところのある人である。情熱がおり・・・ 宮本百合子 「藤村の文学にうつる自然」
・・・封建時代の日本人がその社会生活から慣習づけられていた感情抑制の必要、美の内攻性及び日本の建築、家具什器の材料に木、紙、竹、土類を主要品とした過去の日本の風土的特徴等が、「さび」を語った場合とりあげられなければならないであろう。 仏教の思・・・ 宮本百合子 「文学上の復古的提唱に対して」
・・・若い娘達の生活感情に指針を与えるどころか、彼等自身の足許を、彼女等の示す無自覚なだけ却って抑制のない感情の表現によってぐらつかせられます。人格の陶冶されない男性の共通な癖として、若い女性の気持の夢を認めず、男性同様の現実的慾求が暗示されてい・・・ 宮本百合子 「惨めな無我夢中」
・・・情熱を表現するにはこれを抑制した所を見せる。内心の擾乱をじっと抑えて最後に痛苦を現わす眼のひらめき、えくぼの震えとなる。ベルナアルのように動作と叫び声とで見物の官能を掻き乱し、Shudder を送るというような事はしない。この暗示的な、多く・・・ 和辻哲郎 「エレオノラ・デュウゼ」
出典:青空文庫