・・・金では取れないと見ると帳場は立毛の中に押収してしまう。従って市街地の商人からは眼の飛び出るような上前をはねられて食代を買わねばならぬ。だから今度地主が来たら一同で是非とも小作料の値下を要求するのだ。笠井はその総代になっているのだが一人では心・・・ 有島武郎 「カインの末裔」
・・・しかし、さすがに逃げおくれた連中がいて、押収された煙草は二日間合計して、十五万本だということである。 逃げおくれた連中だけで十五万本、だから大阪全体でどれだけの横流しの煙草があるか、想像も出来ないくらいだ。 ある皮肉屋が言っていた。・・・ 織田作之助 「大阪の憂鬱」
・・・ 武器の押収を命じられていることは、殆んど彼等の念頭になかった。快活らしい元気な表情の中には、ただ、ゼーヤから拾ってきた砂金を掴み取り、肌の白い豊満な肉体を持っているバルシニヤを快楽する、そのことばかりでいっぱいだった。 永井は、ほ・・・ 黒島伝治 「パルチザン・ウォルコフ」
・・・ 兵士達は、始終過激派を追っかけ、家宅捜索をしたり、武器を押収したり、夜半に叩き起され、やにわに武装を整えて応援に出かけたりしなければならなかった。鉄道沿線へは多くに分れて小部隊が警戒に出かけた。栗本の中隊は、汽車に乗ってイイシの警戒に・・・ 黒島伝治 「氷河」
出典:青空文庫