・・・それには、従来永年この農場の差配を担任していた監督の吉川氏が、諸君の境遇も知悉し、周囲の事情にも明らかなことですから、幾年かの間氏をわずらわして実務に当たってもらうのがいちばんいいかと私は思っています。永年の交際において、私は氏がその任務を・・・ 有島武郎 「小作人への告別」
・・・その頃村山龍平の『国会新聞』てのがあって、幸田露伴と石橋忍月とが文芸部を担任していたが、仔細あって忍月が退社するので、その後任として私を物色して、村山の内意を受けて私の人物見届け役に来たのだそうだ。その時分緑雨は『国会新聞』の客員という資格・・・ 内田魯庵 「斎藤緑雨」
・・・ このような人は単に自分の担任の建築や美術品のみならず、他の同種のものに対しても無感覚になる恐れがある。たとえばよその寺で狩野永徳の筆を見せられた時に「狩野永徳の筆」という声が直ちにこの人の目をおおい隠して、眼前の絵の代わりに自分の頭の・・・ 寺田寅彦 「案内者」
・・・これは担任記者の専門知識の欠乏によるのはもちろんであるが、それよりも科学的研究というものの本質に関する極端な無理解がもとであると思われる。もっともそういう無理解は、何も新聞記者だけとは限らず、一般世間の相当教養ある人士の間にも共通であって、・・・ 寺田寅彦 「ジャーナリズム雑感」
中学には中学の課目があり、高等学校には高等学校の課目があって、これを修了せねば卒業の資格はないとしてある。その課目の数やその按排の順は皆文部省が制定するのだから各担任の教師は委託をうけたる学問をその時間の範囲内において出来・・・ 夏目漱石 「作物の批評」
・・・この方面は主として心理学者と云うものが専門として担任しているから、これらの人に聞くのが一番わかりやすい。もっとも心理学者のやる事は心の作用を分解して抽象してしまう弊がある。知情意は当を得た分類かも知れぬが、三つの作用が各独立して、他と交渉な・・・ 夏目漱石 「文芸の哲学的基礎」
・・・私がかつて朝日新聞の文芸欄を担任していた頃、だれであったか、三宅雪嶺さんの悪口を書いた事がありました。もちろん人身攻撃ではないので、ただ批評に過ぎないのです。しかもそれがたった二三行あったのです。出たのはいつごろでしたか、私は担任者であった・・・ 夏目漱石 「私の個人主義」
・・・「こちらは第三学年の担任です。このお方は麻生農学校の先生です。」 私はちょっと礼をしました。「で武田金一郎をどう処罰したらいいかというのだね。お客さまの前だけれども一寸呼んでおいで。」 三学年担任の茶いろの狐の先生は、恭しく・・・ 宮沢賢治 「茨海小学校」
・・・あの畜産の担任が、助手を連れて又やって来た。そして例のたまらない、目付きで豚をながめてから、大へん機嫌の悪い顔で助手に向ってこう云った。「どうしたんだい。すてきに肉が落ちたじゃないか。これじゃまるきり話にならん。百姓のうちで飼ったってこ・・・ 宮沢賢治 「フランドン農学校の豚」
・・・唱歌の先生は世帯持ちでないというばかりでなくその乾物屋の娘の担任ではないのだからというのも、理由の一つであったのだろう。 日本には「うどん屋」という落語がある。 仕事の下手なものを云う表現に「うどんくい」というのがあると、新村出氏の・・・ 宮本百合子 「「うどんくい」」
出典:青空文庫