・・・だから、マスクの特異さ、ある女としての持味だけでどしどし若い女が商品製造につかわれてもゆくのだろう。山口淑子が、ひとこま、ひとこまと場面場面をまとめるように熱演しながら、全部に流れつらぬく情熱を感じさせなかったことの一つの理由は、こういうと・・・ 宮本百合子 「復活」
・・・に即してのことではないが、ある作家の持味というものがブルジョア文学では重大視される必然がある。それぞれの作家が質的の発展をとげぬ限り、階級の枠はかたくそこらの作家の才能の裾をとじつけているから、主題において進展し、拡大することには異常な困難・・・ 宮本百合子 「文学における古いもの・新しいもの」
・・・作家が益々作家として生きんとする欲求はここにもそれぞれの作家の持味をもって表現されているのである。ダヌンツィオが飛行機で飛びまわってヒロイズムを発揮したような時代からこのかた、今日の世界の動きとその間に生きる作家の気持とは、いか程多角的に、・・・ 宮本百合子 「文芸時評」
出典:青空文庫