・・・音楽にあわせ、ハアハア 急所の手ばたきと掛声ばかりは一人前だが、若い男が飛んで跳ねる活溌な足さばきが、その年の小母さんにできようはずはない。ハア どっこいしょ!ハア そら、あぶない! たか・・・ 宮本百合子 「ソヴェト同盟の三月八日」
・・・祖母は、それとは知らず、掛声諸共鼓が鳴り出すと、きっちり両手を膝につっかい、丸まった背を引のばすようにして気張った。その姿は、滑稽でもあり、また気の毒至極であった。実際聴きわける耳もないのに謡と思うとああいう風に気を張るのかと思うと、暗い一・・・ 宮本百合子 「祖母のために」
・・・とか何とか掛声をかけると同時に一二歩進み、ひょいと右か左、どっちかの足を曲げて、パン! と靴裏でもう片方の脚の腓辺を叩く。靴が軟かいし、永年の修練で、 ハオ! パン!と、それは丸い、其癖ひどく刺戟的な勇ましい音を出したものだ。子・・・ 宮本百合子 「茶色っぽい町」
・・・等に比べて、遙かに意慾的なこの作品は、或る労働者の赤坊をとりあげてやった女医である允子が快く早朝のラジオ体操の掛声をきくところで終っているのである。 私は、この作者の生活意識をこの作品までに高め、力あるものとした当時の若い時代の圧力とい・・・ 宮本百合子 「山本有三氏の境地」
出典:青空文庫