・・・そのほか、「幽霊の性質に関する探究」の著者が挙げて居りますカムパアランドのカアクリントン教会区で、七歳の少女がその父の二重人格を見たと云う実例や「自然の暗黒面」の著者が挙げて居りますH某と云う科学者で芸術家だった男が、千七百九十二年三月十二・・・ 芥川竜之介 「二つの手紙」
・・・一般に科学というものを知らなかった上古の人間も学としての形態の充分ととのっていない支那や日本の諸子百家の教えも、また文字なき田夫野人の世渡りの法にも倫理的関心と探究と実践とはある。しかし現代に生を享けて、しかも学徒としての境遇におかれたイン・・・ 倉田百三 「学生と教養」
・・・書を読んで終に書を離れるのが知識階級の真理探究の順路である。 現代青年学生は盛んに、しかしながら賢明に書を読まねばならぬ。しかしながら最後には、人間教養の仕上げとしての人間完成のためには、一切の書物と思想とを否定せねばならぬものであるこ・・・ 倉田百三 「学生と読書」
・・・われわれが物理学のかなり深いところを探究しているつもりでも、時々子供や素人から受ける質問が往々にして意外に根本的な物理学の弱点にふれる事を見るのである。 エネルギー保存説の開祖ロベルト・マイヤーは、当時の物理の世界から見ればむしろ旋毛曲・・・ 寺田寅彦 「科学上における権威の価値と弊害」
・・・ 実際、たとえばすぐれた物理学者が、ある与えられた研究題目に対して独創的な実験的方法を画策して一歩一歩その探究の歩を進めて行った道筋の忠実な記録を読んで行くときの同学読者の心持ちは、自分で行きたくて、しかも一人では行きにくい所へ手を取っ・・・ 寺田寅彦 「科学と文学」
・・・ ある先生達からは自然の探究に対する情熱を吹き込まれた。ある先生方からは研究に対する根気と忍耐と誠実とを授けられた。熱と根気さえあれば白痴でない限り誰でもいくらかの貢献を科学の世界に齎し得るものであるという確信を、先生や先輩に授けられた・・・ 寺田寅彦 「雑感」
・・・また一方では純理的の興味から原理や事実の探究にのみ耽る人もある。中には両方面を併せて豊富に有っている多能な人もないではない。 ボーアのごときはむしろこの第二のタイプの学者であるように思われる。従って世間からうるさく取りすがられ駆使される・・・ 寺田寅彦 「雑記(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
・・・ 現象を記載するだけが科学の仕事だというスローガンがしばしば勘違いに解釈されて、現象の背後に伏在する機構への探究を阻止しようとすることがあるような気がする。しかし、気をつけないと、自働交換台の豆電燈の瞬きを手帳に記録するだけで満足するよ・・・ 寺田寅彦 「雑記帳より(2[#「2」はローマ数字、1-13-22])」
・・・と名のつく学問、ことに精神的方面に関したもので、事物の真を探究するとは言うものの、よく考えてみると物の本来の面目はやはりわからないで、つまりは一種の人相書きか鳥羽絵をかいている場合も多いように思われるが、そのような不完全な「像」が非常に人間・・・ 寺田寅彦 「自画像」
・・・このような方面にはまだたくさんの探究すべき問題が残っている。ことに日本人にとっては日本語の母音や子音の組成、また特有な音色をもった三味線や尺八の音の特異な因子を研究するのはずいぶん興味のある事に相違ない。私はこの種の研究が早晩日本の学者の手・・・ 寺田寅彦 「蓄音機」
出典:青空文庫