・・・はそのことを積極的な評価として推薦されているわけだが、未完成なのはこの作者と作品のどこのことについてかと、考えさせられた。それは主として小説を書く技術のことではないのだろうか。何故なら、この作者は自分の描こうとする対象への当りかたの根本には・・・ 宮本百合子 「今日の文学の諸相」
・・・其れ故決して批評でもなければ、推薦でもない。まして芸術的価値を云々することなどは思いもよらない。一種の作品目録なのである。その便宜の為にも、曖昧な片仮名はやめて、英語は英語のままにして行った方がよかろうと思う。 先ず本国の愛蘭より却・・・ 宮本百合子 「最近悦ばれているものから」
・・・梅崎春生氏がその作品をよまないで推薦したことについての自己批判も同じ日の文化欄に発表された。このことについて梅崎氏は、他の二三のところでも責任を明らかにしたが、同じく「軍艦大和」を「絶讚した」吉川英治、林房雄などからは何の発言もない。 ・・・ 宮本百合子 「作家は戦争挑発とたたかう」
・・・ところが、文部省の推薦図書にはこれが入っていない。何故なのだろう。審査員の中に、そういう方面の科学者がいないのだろうか。いることはいても、投票のようなことの結果ああいう日本として自慢にならないようなことになるという事情があるのだろうか。科学・・・ 宮本百合子 「市民の生活と科学」
・・・新人として推薦され、人前に立つと、その顔に向って、いやこれは違う、本当に新しいとはいえぬという声が正面から発せられ、しかも、推薦者は、それに対して沈黙するか、悪い場合には、いや、実は新しいんでないことは分っていたんだ、と力無くつぶやきかねな・・・ 宮本百合子 「十月の文芸時評」
・・・ 文学へ新人の爽やかな跫音を、と求める気分は濃厚となって、新人推薦、発見の方法は幾多の賞を手引きとして講じられた。抑々日本の現代文学の世界で、こんなに幾種類もの賞の流行が、文化統制の気運とともに組織された文芸懇話会賞から始ったというのは・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
・・・それは、千鶴子がこういう場合必要なだけ自分を打ち開いてくれていないので、×夫人に彼女を推薦しようにも個人的な材料のないことであった。はる子は已を得ず学歴のことだの、専攻したという科目だのについて書いた。 ×夫人のところで不規則ながら収入・・・ 宮本百合子 「沈丁花」
・・・なぜならこのごろ、日本のような稚い民主社会の編輯者たちでさえ、まさか社長や主筆の「友誼的」推薦原稿をそのままのせたりはしなくなっている。『星』に編輯会議はなかったのだろうか。『レーニングラード』編輯局はただ一人で構成されていたのだろうか。・・・ 宮本百合子 「政治と作家の現実」
・・・と問うと、貸本屋は随筆類を推薦する。これを読んで伊勢貞丈の故実の書等に及べば、大抵貸本文学卒業と云うことになる。わたくしはこの卒業者になった。 わたくしは初め馬琴に心酔して、次で馬琴よりは京伝を好くようになり、また春水、金水を読み比べて・・・ 森鴎外 「細木香以」
・・・が、自分はただこの書を読者諸君に推薦し得たことに満足して筆を擱く。 和辻哲郎 「『劉生画集及芸術観』について」
出典:青空文庫