・・・十九世紀のフランスの文学者の或る人々は、当時の科学的研究の発展進歩に瞠目して、自然現象に対する科学の方法をそっくり人間社会の描出にあてはめようとして、人間的現実と文学作品との間から、最大の可能まで作家の存在を消そうという努力を試みたことがあ・・・ 宮本百合子 「人生の共感」
・・・のような無目的で素朴な生活力の氾濫の描出に終りました。プロレタリア文学が、主張した人間性の解放は、社会的現実である階級の解放ともなるものとして理解されていました。したがって人間性の解放とその自由の要求には、過程として当然さまざまの社会的相剋・・・ 宮本百合子 「一九四六年の文壇」
・・・筆致は実に細かで敏感で、長崎の蝉の声、夏の祭日の夜の賑い、夜店の通りを花と一緒に人力車に乗って来るお菊の姿の描写などは、日本人では或はああいう風な色彩的な雰囲気では書けないであろう日本的なものを活々と描出している。だが、ロチの観察には、冷や・・・ 宮本百合子 「パァル・バックの作風その他」
出典:青空文庫