・・・社会問題攻究論者などは、口を開けば官吏の腐敗、上流の腐敗、紳士紳商の下劣、男女学生の堕落を痛罵するも、是が救済策に就ては未だ嘗って要領を得た提案がない、彼等一般が腐敗しつつあるは事実である、併しそれらを救済せんとならば、彼等がどうして相・・・ 伊藤左千夫 「茶の湯の手帳」
・・・議は日本のプロレタリア文学運動が、シッカリと大衆の中に根を張り、国際的な連関において前進して行くために、もっとも重要な、さしあたって第一番に議題として我々が討議し、具体化しなければならない幾多の貴重な提案をなしている。 プロレタリア文学・・・ 黒島伝治 「農民文学の問題」
・・・また媒妁人は、大学で私たちに東洋美術史を教え、大隅君の就職の世話などもして下さった瀬川先生がよろしくはないか、という私の口ごもりながらの提案を、小坂氏一族は、気軽に受けいれてくれた。「瀬川さんだったら、大隅君にも不服は無い筈です。けれど・・・ 太宰治 「佳日」
・・・この本の第二十二章に地震研究方針について米国学界への著者の提案が列挙してある。その冒頭に、先ず有能な学者を日本に派遣して大学地震研究所におけるあらゆる研究の模様を習得せしめよということ、次に末広所長を米国に迎えて講演させ、また米国における将・・・ 寺田寅彦 「工学博士末広恭二君」
・・・かつて誰かが、ある関東の山の上で花火を上げて、高層気象の観測をやろうという提案をした事を思い出して、なるほどこれならば存外ものになりそうだと思いながら見ていた。 なお面白いのは一つ一つの煙の団塊の変形である。これがみな複雑な渦動の団塊で・・・ 寺田寅彦 「雑記(2[#「2」はローマ数字、1-13-22])」
・・・それには百貨店に私のこの提案が採用されると便利であろう。 これらの「知識の売子」にはそう大したえらい本当の学者は入用はないのみならず、かえって甚だ厄介でかつ不都合であろう。この選定はむしろ百貨店の支配人に一任すればよい。 某百貨店の・・・ 寺田寅彦 「夏」
・・・つて保護観察所長をしていた思想検事の長谷川劉が、現在最高裁判所のメムバーであって、さきごろ、柔道家であり、漫談家、作家である石黒敬七、富田常雄などと会談して、ペン・ワン・クラブというものをつくることを提案している。名目は、腕力のあるペン・マ・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十一巻)」
・・・「どなたから提案なさるということも不可能なんでしょうか」「率直にいって麻痺していますからね、どの点からも――。想像もしていないでしょう」「しかたがないというわけかしら」 某氏は苦痛な眼つきでしばらく沈黙していた。「――ど・・・ 宮本百合子 「ある回想から」
・・・もし、女ばかりの小集団になれば、既成各党は、何の苦痛も感じることなく「ああ、それは御婦人たちの提案で」とスーとわきを通過してしまうだろう。既に、米の三合配給などを公約した婦人たちは、途方にくれる立場にさらされている。自由党はそのような公約は・・・ 宮本百合子 「一票の教訓」
・・・ ルイジョフは、ズボンのポケットへ両手を突こんで、インガの積極的な研究的な提案を皮肉った。そして、彼女に当てこすって、傍にいるソモフに大声でからんだ。「――だが。こりゃ正しいことかね? 組織はここへ、工場へ仕事するために彼女をよこし・・・ 宮本百合子 「「インガ」」
出典:青空文庫