・・・と忽ち僕を撲滅した。 丁度やはりその前後にちょっと「ホトトギス」を覗いて見たら、虚子先生も滔滔と蛇笏に敬意を表していた。句もいくつか抜いてあった。僕の蛇笏に対する評価はこの時も亦ネガティイフだった。殊に細君のヒステリイか何かを材にした句・・・ 芥川竜之介 「飯田蛇笏」
・・・機会さえあればそう云った目障りなものを除き去ろう撲滅しようとかゝってるんだからね。それで今度のことでは、Yは僕のこともひどく憤慨してるそうだよ。……小田のような貧乏人から、香奠なんか貰うことになったのも、皆なKのせいだというんでね。かと云っ・・・ 葛西善蔵 「子をつれて」
・・・ 蚊の撲滅 北米バルチモアーでは蚊のためにいろんな病気の流行るのを防ぐために一昨年市会で二万円ほど支出して撲滅にかかったが、結果がよかったので今年また一万円ほど支出したそうである。方法はやはり水溜りに石油を撒き、井・・・ 寺田寅彦 「話の種」
・・・さればこれを改良するというのも、あるいはこれを撲滅するというのも、いずれにしても滅び行く三味線の身に取っては同じであるといわねばならぬ。珍々先生が帝国劇場において『金毛狐』の如き新曲を聴く事を辞さないのは、つまり灰の中から宝石を捜出すように・・・ 永井荷風 「妾宅」
・・・であり、改革された土地に対する新しい自分たちの権利について署名したのが、自分の姓名のかきはじめだというような事情は、ロシヤの人民が文盲撲滅運動でピオニェールからアルファベットをおそわった頃、まずおぼえたのが、「ソヴェト」という字であったこと・・・ 宮本百合子 「新しい抵抗について」
・・・は、翻る赤旗とともに、すべてこういうプロレタリア、農民への重石をはねのけ、猛然と文盲撲滅をはじめた。工場の中、兵営の中、農村、町、ソヴェトの中、教会の中をもいとわず、共産青年同盟員やピオニェールが、アルファベットのカードをこしらえて、七十の・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェト同盟の文化的飛躍」
・・・ 富農撲滅と富農と結托する僧侶排撃の精力的な活動と集団農場での文化向上のための文化・芸術ウダールニクが、元気のいいつむのように彼方から此方の村へと飛んだ。 一九二九年には、ソヴェト全農戸の五〇パーセントが集団農場化し、農民の心理は急・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・この官僚主義者、新生活の擾乱者の標本が、世界無産婦人デーの夜、トラムによってどう撲滅されるか、息をつめて観ている。 外でモスクワは濡れた春のビードロ玉だ。夜が更けるにつれ益々すべっこくなった。モスクワ大学横の暗い坂をタクシーが一台登・・・ 宮本百合子 「三月八日は女の日だ」
・・・から自分を守るものだと思っていた明治や大正の日本の娘たちは、今日若い婦人たちのほとんどすべてがさまざまの経済的事情から職業を持ち、あの混む電車に乗り、さらにあまりりっぱな服装をしていない若い女性は性病撲滅のためという理由によって、警察にとめ・・・ 宮本百合子 「自覚について」
・・・ ――だって、お前、ソヴェト同盟じゃ、あんなにプロレタリアートの階級意識を眠らす毒薬として宗教撲滅運動やってるじゃないか、見たよ、ソヴェトで出してる面白い絵入りの反宗教雑誌を。 ――確にそうさ。ソヴェト同盟のその運動は革命当時から着・・・ 宮本百合子 「正月とソヴェト勤労婦人」
出典:青空文庫