・・・ それにつけて、都会の生活は、新聞に、雑誌に、実際をきくこと屡々なるけれど、今日の田舎の生活は、真実にして、尚お、階級意識の支持者たる、真のプロレタリア作家の筆に俟たなければ、いまだ真の地の叫びをきくに至らない実状にあります。都会の新興・・・ 小川未明 「街を行くまゝに感ず」
・・・そして今のところ青年学生はこの知性主義を支持し、それが読書の方向を支配しているかに見える。 われわれはインテリゼンスの階層である読書青年が今その旺盛な知識欲をもって、その知的胃腑を満たし、また思考力を操練せねばならないとき、知性の拡充よ・・・ 倉田百三 「学生と読書」
・・・を言うな。だまって信じて、ついて行け。オアシスありと、人の言う。ロマンを信じ給え。「共栄」を支持せよ。信ずべき道、他に無し。 甘さを軽蔑する事くらい容易な業は無い。そうして人は、案外、甘さの中に生きている。他人の甘さを嘲笑しながら、・・・ 太宰治 「かすかな声」
・・・小説を芸術として考えようとしたところに、小説の堕落が胚胎していたという説を耳にした事がありますが、自分もそれを支持して居ります。創作に於いて最も当然に努めなければならぬ事は、「正確を期する事」であります。その他には、何もありません。風車が悪・・・ 太宰治 「風の便り」
・・・この叔母は、私の小さい時から、頑強に私を支持してくれていた。 中畑さんのお家で、私は紬の着物に着換えて、袴をはいた。その五所川原という町から、さらに三里はなれた金木町というところに、私の生れた家が在るのだ。五所川原駅からガソリンカアで三・・・ 太宰治 「帰去来」
・・・君の手紙のうれしかったのは、そんな秘れた愛情の支持者があの中にいたことだ。君が神なら僕も神だ。君が葦なら――僕も葦だ。三、それから、君の手紙はいくぶんセンチではなかったか。というのは、よみながら、僕は涙が出るところだったからだ。それを僕のセ・・・ 太宰治 「虚構の春」
・・・父のお気に入りらしく、父も母も、それは熱心に、支持していました。お写真は、拝見しなかった、と思います。こんな事はどうでもいいのですが、また、あなたに、ふふんと笑われますと、つらいので、記憶しているだけの事を、はっきり申し上げました。いま、こ・・・ 太宰治 「きりぎりす」
・・・小説家としての私の愚見も、あるいは、ひょっとしたら、ひとりの勇敢な映画人に依って支持せられるというような奇蹟が無いものでもあるまい。もし、そのような奇蹟が起ったならば、これもまた御奉公の一つだと思われる。どんな小さい機会でも、粗末にしてはな・・・ 太宰治 「芸術ぎらい」
・・・熊本君は、ほっとした顔をして、佐伯の言を支持した。「酒を飲む人の話は、信用出来ませんからね。」と言って、頬に幽かな憫笑を浮かべた。「僕は、だめだ。」そう言って、私には、腹にしみるものが在った。「けれども僕は、絶望していないんだ。酒だって・・・ 太宰治 「乞食学生」
・・・元気とは、身体を支持するいきおい。精神の活動するちから。すべて物事の根本となる気力。すこやかなること。勢いよきこと。私は考える。自分にいま勢いがあるかどうか。それは神さまにおまかせしなければならぬ領域で、自分にはわからない事だ。お元気ですか・・・ 太宰治 「作家の手帖」
出典:青空文庫