・・・卒ニ天保ノ改革ニ当ツテ永ク廃斥セラル。然レドモ猶有縁ノ地タルヲモツテ、吉原回禄ノ災ニ罹ル毎ニ、権ク爰ニ仮肆ヲ設ケテ一時ノ栄ヲ取ルコト也最数回ナリ。其ノ後慶応年間ニ至ツテ、松葉屋某ナル者魁主トナリ、遂ニ旧府ノ許可ヲ禀クルヤ、同志厠与ニ助ケテ以・・・ 永井荷風 「上野」
・・・然らばこの問題を逆にして試に東京の外観が遠からずして全く改革された暁には、如何なる方面、如何なる隠れた処に、旧日本の旧態が残されるかを想像して見るのも、皮肉な観察者には興味のないことではあるまい。実例は帝国劇場の建築だけが純西洋風に出来上り・・・ 永井荷風 「銀座」
・・・健全なるジョン・ラスキンが理想の流れを汲んだ近世装飾美術の改革者ウィリアム・モオリスという英吉利人の事を言おう。モオリスは現代の装飾及工芸美術の堕落に対して常に、趣味 Got と贅沢 Luxe とを混同し、また美 Beaut と富貴 Ric・・・ 永井荷風 「妾宅」
・・・親鸞上人に初めから非常な思想があり、非常な力があり、非常な強い根柢のある思想を持たなければ、あれほどの大改革は出来ない。言葉を換えて言えば親鸞は非常なインデペンデントの人といわなければならぬ。あれだけのことをするには初めからチャンとした、シ・・・ 夏目漱石 「模倣と独立」
・・・たとえば世に、商売工業の議論あり、物産製作の議論あり、華士族処分の議論あり、家産相続法の議論あり、宗旨の得失を論ずる者あり、教育の是非を議する者あり、学校設立の説を述る者あり、文字改革の議を発する者あり。 いずれも皆、国の文明のために重・・・ 福沢諭吉 「学者安心論」
・・・、学者の栄誉を表するがために位階勲章を賜わるは、まことに尋常の事にして、政府の官吏にのみこれを賜わるの多きこそ、かえって人の耳目を驚かすべきほどの次第なれば、今回幸にして行政官直轄の諸学校を私立の体に改革せられたらば、その教員の輩はもとより・・・ 福沢諭吉 「学問の独立」
・・・誓えば藩政の改革とて、藩士一般に倹約を命ずることあり。この時、衣服の制限を立るに、何の身分は綿服、何は紬まで、何は羽二重を許すなどと命を出すゆえ、その命令は一藩経済のため歟、衣冠制度のため歟、両様混雑して分明ならず。恰も倹約の幸便に格式りき・・・ 福沢諭吉 「旧藩情」
・・・故に曰く、社会の有様を改革せんと欲せば、先ずその学校を改革すべきなり。 前条に記したる鬼蛇父母なり、また公務家なり、いやしくも上等社会に列して銭に不自由なき人なれば、その子に学問を教えんと欲せざる者なし。而してそのこれを教うるの方法如何・・・ 福沢諭吉 「教育の事」
・・・曙覧はまずこの第一の門戸を破りて、歌界改革の一歩を進めたり。〔『日本』明治三十二年三月三十日〕 曙覧が客観的景象を詠ずるは、新材料を入れたることにおいて、新趣味を捉えしことにおいて、『万葉』より一歩を進めたるとともに、新言語新句・・・ 正岡子規 「曙覧の歌」
・・・であり、改革された土地に対する新しい自分たちの権利について署名したのが、自分の姓名のかきはじめだというような事情は、ロシヤの人民が文盲撲滅運動でピオニェールからアルファベットをおそわった頃、まずおぼえたのが、「ソヴェト」という字であったこと・・・ 宮本百合子 「新しい抵抗について」
出典:青空文庫