・・・ら、それで工夫をして、竹がまだ野に生きている中に少し切目なんか入れましたり、痛めたりしまして、十分に育たないように片っ方をそういうように痛める、右なら右、左なら左の片方をそうしたのを片うきす、両方から攻める奴を諸うきすといいます。そうして拵・・・ 幸田露伴 「幻談」
・・・三田君は、戸石君と二人きりになると、訥々たる口調で、戸石君の精神の弛緩を指摘し、も少し真剣にやろうじゃないか、と攻めるのだそうで、剣道三段の戸石君も大いに閉口して、私にその事を訴えた。「三田さんは、あんなに真面目な人ですからね、僕は、か・・・ 太宰治 「散華」
・・・ それを捕え、まさ子は半分冗談で攻めるように、「国府津へなんか来いと仰云るから悪いんですよ」などと云った。 なほ子は台所へ出て行き、冷肉を拵える鶏を注文させた。料理台の傍に立っている女中に、「晩に上るもの、何か拵えた・・・ 宮本百合子 「白い蚊帳」
・・・ リージンの大柄な口紅を濃くつけた細君は、いかにも夫の手抜かりを攻める面持で、自分たちのいる横で二人だけあっちへのせろ、と云っている。リージンは自分から誘って坐席の割前を助かろうとした手前、ではあっちへ二人でとは云いかね、「そんなことは・・・ 宮本百合子 「石油の都バクーへ」
出典:青空文庫