・・・ また、先生のお母さんと、弟さんは、その町にあった、教会堂の番人をなさっていることも知ったのでした。 だが、ついにおそれた、その日がきました。せめてもの思い出にと、年子は、先生とお別れする前にいっしょに郊外を散歩したのであります。・・・ 小川未明 「青い星の国へ」
・・・ 三 山の麓のさびれた高い鐘楼と教会堂の下に麓から谷間へかけて、五六十戸ばかりの家が所々群がり、また時には、二三戸だけとびはなれて散在していた。これがユフカ村だった。村が静かに、平和に息づいていた。 兵士達は・・・ 黒島伝治 「パルチザン・ウォルコフ」
・・・昭和通りに二つ並んで建ちかかっている大ビルディングの鉄骨構造をねらったピントの中へ板橋あたりから来たかと思う駄馬が顔を出したり、小さな教会堂の門前へ隣のカフェの開業祝いの花輪飾りが押し立ててあったり、また日本一モダーンなショーウィンドウの前・・・ 寺田寅彦 「カメラをさげて」
・・・左手に、高くすっきり櫓形に石をたたみ上げた慈海燈を前景とし、雨空の下にぼんやり遠く教会堂の尖塔が望まれる。櫛比した人家の屋根の波を踰え、鈍く光りつつ横わっている港の展望、福済寺は、長崎港の一番奥、東北よりの丘陵の上に位している。埋立地もなか・・・ 宮本百合子 「長崎の印象」
出典:青空文庫