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・・・これはほとんど病苦と云うものの経験のない、赭ら顔の大男で、文武の両道に秀でている点では、家中の侍で、彼の右に出るものは、幾人もない。そう云う関係上、彼はこれまで、始終修理に対して、意見番の役を勤めていた。彼が「板倉家の大久保彦左」などと呼ば・・・
芥川竜之介
「忠義」
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・・・子弟を学塾に入れ或は他国に遊学せしむる者ありて、文武の風儀にわかに面目を改め、また先きの算筆のみに安んぜざる者多し。ただしその品行の厳と風致の正雅とに至ては、未だ昔日の上士に及ばざるもの尠なからずといえども、概してこれを見れば品行の上進とい・・・
福沢諭吉
「旧藩情」