・・・ 二人の間の話題は、しばらく西太后で持ち切っていたが、やがてそれが一転して日清戦争当時の追憶になると、木村少佐は何を思ったか急に立ち上って、室の隅に置いてあった神州日報の綴じこみを、こっちのテエブルへ持って来た。そうして、その中の一枚を・・・ 芥川竜之介 「首が落ちた話」
・・・もっとも、これは、ゾイリアで出るゾイリア日報のうけ売りですが。」「価値測定器と云うのは何です。」「文字通り、価値を測定する器械です。もっとも主として、小説とか絵とかの価値を、測定するのに、使用されるようですが。」「どんな価値を。・・・ 芥川竜之介 「MENSURA ZOILI」
・・・ しかし、間もなく朦朧俥夫の取締規則が出来て、溝の側の溜場にも屡しばしばお手入れがあってみると、さすがに丹造も居たたまれず、暫らくまごまごした末、大阪日報のお抱え俥夫となった。殊勝な顔で玄関にうずくまり、言葉つきもにわかに改まって丁寧だ・・・ 織田作之助 「勧善懲悪」
出典:青空文庫