・・・それにはずいぶん沢山の日数がかかりました。 ウイリイは馬のところへ行って、船が出来たと知らせました。そうすると馬は、「それでは王さまにお願いして、肉とパンとうじ虫を百樽ずつ用意しておもらいなさい。そのほかにその樽を二つずつはこぶ車が・・・ 鈴木三重吉 「黄金鳥」
・・・二十日に要るのですけれど(日数に於いて掛値おそくだと、私のほうでも都合つくのですが(虚飾のみ。人を愚弄万事御了察のうえ、お願い申しあげます。何事も申しあげる力がございません委細は拝眉の日に。三月十九日。治拝。(借金の手紙として全く拙劣を極む・・・ 太宰治 「誰」
・・・ながい日数が、かかるけれども、自然療法がいちばんいい。がまんして、しばらくは、ここに居れ。おれは、これから、うちへ帰って、みなに報告しなければいけない。悪いようには、せぬ。それは、心配ない。お金は、一銭も置いて行かぬ。買いたいものが、あるな・・・ 太宰治 「火の鳥」
・・・「その日数だけ休暇が貰えるかね。半年は掛かるよ。」中尉はこう云って、小さい銀行員を、頭から足まで見卸した。「ええ。僕がいないと、銀行で差支えるのですが、どうにかして貰えないことはなかろうと思います。」実はこれ程容易な事はない。自分が・・・ 著:ダビットヤーコプ・ユリウス 訳:森鴎外 「世界漫遊」
・・・それを知るに必要な材料として伊吹山および付近の各地測候所における冬季の降水日数を調べて送ってもらった。その詳細の数字は略するが、冬期すなわち十二月一月二月の三か月中における総降水日数を、最近四か年について平均したものをあげてみると、次のよう・・・ 寺田寅彦 「伊吹山の句について」
・・・三十七年と云えば大して長くも聞こえないが、日数にすれば一万三千五百五日である。その間に朝日夕日は一万三千五百五回ずつ平和な浜辺の平均水準線に近い波打際を照らすのである。津浪に懲りて、はじめは高い処だけに住居を移していても、五年たち、十年たち・・・ 寺田寅彦 「津浪と人間」
・・・それにも係わらず、多数の日数を含む統計的素材を統計的に取り扱う場合には、これらの個々の場合は問題とならず、ただ平均の関係だけが結果として現われるであろう。降雨のほうでは、全雨量の平均幾割幾分が開場時間に落ちるかが定まり、また外出する市民の平・・・ 寺田寅彦 「物質群として見た動物群」
・・・秋山さんの方は、それから大分日数がかかった。これは相も悉皆崩れていたという話でね。」 爺さんはそこまで話して来ると、目を屡瞬いて、泣面をかきそうな顔を、じっと押堪えているらしく、皺の多い筋肉が、微かに動いていた。煙管を持つ手や、立ててい・・・ 徳田秋声 「躯」
・・・ 日数が立つにしたがって文鳥は善く囀ずる。しかしよく忘れられる。或る時は餌壺が粟の殻だけになっていた事がある。ある時は籠の底が糞でいっぱいになっていた事がある。ある晩宴会があって遅く帰ったら、冬の月が硝子越に差し込んで、広い縁側がほの明・・・ 夏目漱石 「文鳥」
・・・その時念のためこの次はいつごろになりますかと岡田さんに伺いましたら、此年の十月だというお返事であったので、心のうちに春から十月までの日数を大体繰ってみて、それだけの時間があればそのうちにどうにかできるだろうと思ったものですから、よろしゅうご・・・ 夏目漱石 「私の個人主義」
出典:青空文庫