・・・あの声がまだ何か云うだろうと思って待っている。あの甘い、銀のような声で語り続けて、また色々な事を言って聞せてくれるだろうと思われるのである。 女の言う事は寺でする懺悔のようである。そしてその意味は分からない。 事によったらこの壁に沿・・・ 著:リルケライネル・マリア 訳:森鴎外 「白」
・・・我々はこういう甘い快さで、深い満足が得られるか。あのような題材からただあれだけの美しさを抽出して来るのでは、あまりにのんきすぎはしないか。湯は色の好みのために温かさを無視せられている。女の体には湯に温まったという感じがまるでない。白い柔らか・・・ 和辻哲郎 「院展遠望」
出典:青空文庫