・・・けれどもそれだけの理由のために半三郎の日記ばかりか、常子の話をも否定するのはいささか早計に過ぎないであろうか? 現にわたしの調べたところによれば、彼の復活を報じた「順天時報」は同じ面の二三段下にこう言う記事をも掲げている。――「美華禁酒・・・ 芥川竜之介 「馬の脚」
・・・然れども、之を以て直ちに老生の武術に於ける才能の貧困を云々するは早計にて、嘗つて誰か、ただ一日の修行にて武術の蘊奥を極め得たる。思う念力、岩をもとおすためしも有之、あたかも、太原の一男子自ら顧るに庸且つ鄙たりと雖も、たゆまざる努力を用いて必・・・ 太宰治 「花吹雪」
・・・ただこれだけの断片から彼の文化観を演繹するのは早計であろうが、少なくも彼が「石炭文明」の無条件な謳歌者でない事だけは想像される。少なくも彼の頭が鉄と石炭ばかりで詰まっていない証拠にはなるかと思う。 彼はまだこれからが働き盛りである。・・・ 寺田寅彦 「アインシュタイン」
出典:青空文庫