・・・十二章二節より五節まで、明白に来世的である。キリストの再臨に関する警告二つ。同十二章三十五節以下四十八節まで。序に「小き群よ懼るる勿れ」との慰安に富める三十二節、三十三節に注意せよ。人は悔改めずば皆な尽く亡ぶべしとの警告。十三章一節・・・ 内村鑑三 「聖書の読方」
・・・もっとも、淘汰した者も全然ないわけではなく、たとえば、売上げ金費消の歴然たる者は、罪状明白なりとして馘首、最初の契約どおり保証金は没収した。 しかし、これとても全然はなからの計画ではなく、冷酷といってしまえばそれまでだが、敢えて「あばく・・・ 織田作之助 「勧善懲悪」
・・・円い玉子はこのように切るべきだと、地球が円いという事実と同じくらい明白である。しかし、この明白さに新吉は頼っておられなかったのだ。よしんば、その公式で円い玉子が四角に割り切れても、切れ端が残るではないかと考えるのだ。 新吉は世相を描こう・・・ 織田作之助 「郷愁」
・・・「否エ妾になれって明白とは言わないけれど、妾々ッて世間で大変悪く言うが芸者なんかと比較ると幾何いいか知れない、一人の男を旦那にするのだからって……まあ何という言葉でしょう……私は口惜くって堪りませんでしたの。矢張身を売るのは同じことだと・・・ 国木田独歩 「二少女」
・・・だから大将に、どちらでもいいからだめだとかできるとか、明白に早く決定を与えてもらいたいと言ってくれたまえ、大将あれでばかに人がいいから、頼むとなんでもかんでもそうしてやらなければならんと心得てるからやりきれない。中に立ってる者はありがた迷惑・・・ 国木田独歩 「疲労」
・・・と、いうように何も明白に順序立てて自然に感じられるわけでは無いが、何かしら物苦しい淋しい不安なものが自分に逼って来るのを妻は感じた。それは、いつもの通りに、古代の人のような帽子――というよりは冠を脱ぎ、天神様のような服を着換えさせる間にも、・・・ 幸田露伴 「鵞鳥」
・・・然し此女の言葉は主人の昨日今日を明白にして了った。そして又真正面から見た「にッたり」の木彫に出会って、これが自分で捌き得る人物だろうかと、大に疑懼の念を抱かざるを得なくなり、又今更に艱苦にぶつかったのであった。 主人の憤怒はやや・・・ 幸田露伴 「雪たたき」
・・・彼らは、明白に意識せるといなとは別として、彼らの恐怖の原因は、別にあると思う。 すなわち、死ということにともなう諸種の事情である。その二、三をあげれば、天寿をまっとうして死ぬのでなく、すなわち、自然に老衰して死ぬのでなくして、病疾その他・・・ 幸徳秋水 「死刑の前」
・・・彼等は自ら明白に意識せると否とは別として、彼等が恐怖の原因は別に在ると思う。 即ち死ちょうことに伴なう諸種の事情である、其二三を挙ぐれば、天寿を全うして死ぬのでなく、即ち自然に老衰して死ぬのでなくして、病疾其他の原因から夭折し、当然享く・・・ 幸徳秋水 「死生」
・・・う、シーボルトという奴は、もとから、ほら吹きであった、などと分別臭い顔をして打ち消す学者もございましたが、どうも、そのニッポンの大サンショウウオの骨格が、欧羅巴で発見せられた化石とそっくりだという事が明白になってまいりましたので、知らぬ振り・・・ 太宰治 「黄村先生言行録」
出典:青空文庫