・・・その動き方は別に私が発明した訳でも何でもない、ただ西洋の学者が書物に書いた通りをもっともと思うから紹介するだけでありますが、すべて一分間の意識にせよ三十秒間の意識にせよその内容が明暸に心に映ずる点から云えば、のべつ同程度の強さを有して時間の・・・ 夏目漱石 「現代日本の開化」
・・・金釦が眼に映ずる、金釦を意識する。講堂の天井が黒くなっている、その黒い所を意識する。――これは悪口ではありません。美術学校の天井が黒いと云うのではない、ただ黒いと意識するので、客観的存在は認めておらん悪口だから構わないでしょう。 まずこ・・・ 夏目漱石 「文芸の哲学的基礎」
・・・そして読書に飽きたオオビュルナンの目には Balzac が小説に出る女主人公のように映ずるのである。 そこへまた他の一種の感情が作用する。それはやや高尚な感情で、自分の若かった昔の記念である。あの頃の事を思ってみれば、感情生活の本源まで・・・ 著:プレヴォーマルセル 訳:森鴎外 「田舎」
出典:青空文庫