・・・多分昼間は隙がないのだろう。「冬になるとお前さんどこへ行くかね。コッペンハアゲンだろうね。」「いいえ。ここにいます。」「ここにいるのだって。この別荘造りの下宿にかね。」「ええ。」「お前さんの外にも、冬になってあの家にいる・・・ 著:ランドハンス 訳:森鴎外 「冬の王」
・・・右のような時刻には、外気が冷たくなり、蕾の内部の気温との相対的な関係が、昼間と逆になるはずである。何かそういう類の微妙な空気の状態が、蓮の開花と連関しているのかもしれない。その点から考えると、気温の最も低くなる明け方が、最も開花に都合のいい・・・ 和辻哲郎 「巨椋池の蓮」
出典:青空文庫