・・・から、今日のせわしない空気に対して、そういう手紙の編纂掲載は時日からいって、まだ時機が早いというのならば、それは当っていると思う。けれども「思想性」がないから、という片づけかたには、それを掲載するしないにかかわらず、文化発展のための蓄積・文・・・ 宮本百合子 「「どう考えるか」に就て」
・・・だがしかし、今年のメーデーは特に労働婦人、貧農婦人、そして一切の搾取され圧迫されている婦人にとって、大きな意義を持っているということを時日の切迫した今日更めて強く心に入れ、その意義がどうすれば生活の上に生きるかを知り、その事を実行しなければ・・・ 宮本百合子 「メーデーに備えろ」
・・・軍では時日を変更することは出来ない。そこで、その日は栖方を除いたものだけで試験飛行を実行した。見ていると、大空から急降下爆撃で垂直に下って来た新飛行機は、栖方の眼前で、空中分解をし、ずぼりと海中へ突き込んだそのまま、尽く死んでしまった。・・・ 横光利一 「微笑」
・・・戦争については、吉日を選び、方角を考えて時日を移すというような、迷信からの脱却を重大な心掛けとして説いている。その他正直者の重用を説き、理非を絶対に曲げてはならないこと、断乎たる処分も結局は慈悲の殺生であることなどを力説しているのも、目につ・・・ 和辻哲郎 「埋もれた日本」
・・・いかにすれば珍しい変種ができるだろうかとか、いかにすれば予定の時日の間に注文通りの果実を結ぶだろうかとか、すべてがあまりに人工的である。 天を突こうとするような大きな願望は、いじけた根からは生まれるはずがない。 偉大なものに対する崇・・・ 和辻哲郎 「樹の根」
・・・あるものはただ少年時の感激によってのみ記憶され、あるものは幾年かの時日によって印象を鈍らされている。それでなお先生の芸術を云為することができるのか。――私はあえて筆を執ろうとする自分の無謀にも驚かざるを得ない。しかも今私は二、三の事を書きた・・・ 和辻哲郎 「夏目先生の追憶」
出典:青空文庫