・・・ 家に帰って空腹に美味な晩食をとり、湯を浴び、熟睡して、更に新鮮な月曜日を迎えるのです。 勿論、右のようなのは生活の大体の筋書で、例外も起れば、風雲啻ならないような場合もありましょう。けれども、このR氏夫妻のみならず、真個におのおの・・・ 宮本百合子 「男女交際より家庭生活へ」
・・・生れて半年ばかりの赤坊もいて、お祖父さんになった父は私を自分の隣りに坐らせて大賑やかに晩食をした。九時頃になったとき、私は自分宛に来ていた雑誌などを帛紗に包みながら、「さあ、そろそろ引上げようかしら」と云った。父は、渋い赤がちの壁紙・・・ 宮本百合子 「わが父」
・・・そしてあの小さい綺麗な女房がまたパンの皮を晩食にするかと思うと、気の毒でならなかった。ところがその心持を女房に知らせたくないので、女房をどなり附けた。「あたりめえよ。銭がありゃあ皆手めえが無駄遣いをしてしまうのだ。ずべら女めが。」 ・・・ 著:モルナールフェレンツ 訳:森鴎外 「破落戸の昇天」
出典:青空文庫